ドラゴニア急変
わたしは「ふぅ~~」と、大きくため息をつき、
「そのドラゴニア救済連合だっけ? 怪しげな会合は気になるけど、ブタさんたちの誘いでしょ。近くにいるだけで太りそうだわ。ハッキリ言って、行くのはイヤよ」
「正しくは『ドラゴニア救済諸侯大連合』ですが、それはさておき、その会合には法的に出席義務はありません。ですので、今後、アート公、ウェストゲート公、サムストック公とよしみを結ぶことが一切ないと断言できるようであれば……」
「それだけは、絶対にあり得ないわ」
わたしは両腕で「×印」を作って言った。
すると、パターソンは、そういう反応を半ば予想していたかのごとく、
「やはり、そうですか。では、そのように取りはからいます。話としては、以上でお終いですが、詳細について説明する方がよろしいでしょうか?」
「そうね、せっかくだから、その、『最初から』だっけ、順を追って、説明してくれる?」
「かしこまりました」
パターソンの説明によれば、ドラゴニアが騎士団主導の総意により「今後一切、断じて、マーチャント商会への債務を支払わない」と宣言し、マーチャント商会に対する事実上の宣戦を行って以降、アート公、ウェストゲート公、サムストック公(つまり三匹のブタさん)が突如として色めきだし、ドラゴニアに味方する旨を公に宣言したという。
わたしは「はて」と首をひねり、
「あの~、どういう脈絡なのか、全然、分からないんだけど……」
「でしょうね。ただ、参戦理由の政治的な背景については、こちらとしても想像する以外なく、おそらくは、マーチャント商会及び帝国宰相に一泡吹かせてやろうと、こういうところではないかと思われます」
「なんだか頼りないけど……、実際、そんなところかしらね」
「ただ、若干敷衍いたしますと……」
すなわち、アート公、ウェストゲート公、サムストック公は、ドラゴニアで債務の不払いを決めた会合の場にわたしがいたこと、ウェルシーがドラゴニアを支援する約束をしたこと等を知り(どこで聞いたのか知らないが、彼らにもそれなりの情報網はあるのだろう。ただ、わたしとマーチャント商会が宮殿の中庭で最終的に妥協したことまでは知らないようだ)、その後すぐにドラゴニアと同盟を締結し、のみならず、他の諸侯にも同盟への加入の勧誘を始めたという。同盟の名称は「ドラゴニア救済諸侯大連合」。ただし、現時点では、彼ら三匹のブタさん以外に同盟への加入はなく、ブタさんたちとしては、同盟の勢力拡大に躍起になっているところだとか。
「そこで、二度までもマーチャント商会の大軍を打ち破った実績のあるカトリーナ様に、この度、ドラゴニア救済諸侯大連合の会合への参加を求める書状が届いたというわけです。つまり、カトリーナ様が目に見える形で正式に同盟に加入すれば、他の諸侯も『勝ち馬に乗る』べく、同盟に加わるとの読みでしょうね」
わたしは「ふぅ」と、今度はやや小さいため息。ドラゴニアでニコラスにも同じことを言われたけど、その二度の戦は、正直、あまり威張れる話ではない。




