表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第7章 錯綜と混迷
55/293

のんべんだらりとした日々

 スヴォールの住居兼研究所を訪問した日から、数日が過ぎた。その間、パターソンには、プチドラへのプレゼント用の帝国銘酒詰め合わせセットを買いに行かせたり(購入先は、少々口惜しいけれど、マーチャント商会)、お金をかき集めて研究資金としてスヴォールのところへ届けさせたりしながら、わたし自身は何をするともなしに、深夜に就寝して昼前に起きるという、のんびりと(言い換えれば、のんべんだらりと)した生活が続いていた。

「マスター、やっぱり、平和が……、いいねぇ…… うぃ~、ヒック……」

 銘酒詰め合わせセットが届くと、プチドラは、早速、ラッパ飲みでゴクゴクと、かなり速いペースで銘酒を喉に流し込んだ。

「あなたのために、普段なら絶対に買わない高級なお酒を買ってきたのよ。そんなにすぐに飲んでしまわないで、もっと味わって飲みなさいよ」

「いいの。アルコール大王は、いつでもぉ、どこでもぉ、一気飲みぃぃぃ!」

 わたしは思わず、「ふぅ」と小さく息をはき出した。こんなことなら、工業用アルコールを水で薄めてレモンで味付けするだけでもよかったかもしれない。

 なお、アメリアとクレアの天然ボケ・ツッコミの漫才あるいはコントはいつものこと。

 アメリアは、飲むペースが速すぎたためひっくり返っていびきをかいているプチドラを横目に、

「アンジェラさん、いけませんよ。世界の銘酒といっても、やはり、お酒はお酒です。お酒の中には、え~っと、メチルアルコールとか、エチルとか、チルチル、え~っと、あれ? とにかく、いろいろな猛毒が入っているのです」

 一体、何を言いたいんだか……


 この日も何をするともなく、応接室のソファに寝そべっていると、

「カトリーナ様、ちょっと……、いえ、ちょっとではありませんね、かなり厄介かつ困難な問題が持ち上がりましたもので……」

 珍しく顔をしかめたパターソンが、片手に書類や巻物等々を抱え、応接室に入ってきた。

「どうしたの? 『厄介』とか『困難』って、なんのこと??」

「ドラゴニアのマーチャント商会への債務の関係なのですが、ひと言で表現するとすれば、事態がより複雑化してしまったということです。長い話になりますが、最初から、お聞きになります?」

「最初から聞かなければならないなら聞くけど……、その話の結論としては、どうなってるのかしら。とりあえず、結論を先に教えてよ」

 すると、パターソンは書類や巻物を机の上に置き、やや苦笑交じりに、

「結論としましては、アート公、ウェストゲート公、サムストック公より、彼らの表現を借用すれば、『この上なくありがたい御招待なるゆえ、次回のドラゴニア救済諸侯大連合の会合には必ず参集すべし』との書状が届いています。でも、これだけでは、分からないと思いすよ」

 わたしは「えっ!?」と、思わず目が点。アート公、ウェストゲート公、サムストック公といえば、(正直、思い出したくはないが)いつも宮殿で腹を突き出して、いかにも「私はエライ」という調子で、ふんぞり返って歩いてくる三匹のブタさんたちではないか。そのブタさんたちが、一体、わたしに何用だろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ