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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第6章 ぶっ壊れて逝っちまっている錬金術師
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一応、契約成立

 ドアの向こうには6畳ほどの小さな部屋があり、部屋には、壊れかけた机と粗大ゴミ置き場から拾ってきたようなソファが置かれていた。当然のように不潔極まりなく、ゴミや食べ残しのようなものがあちこちに散らばっている。

 スヴォールは、持っていた荷物を無造作に部屋の壁際に置くと、ピョンと跳ねるようにソファに座り、

「何をモタモタしている? ウキキ! さっさと座りやがれ」

 座れと言われも、とても座る気になれないくらいに汚れたソファだが……

 しかし、パターソンは、「では、失礼して」と、無難なもの言いをしてソファに腰掛け、わたしを見上げた。こうなれば仕方がない。わたしだけ立っているのも不自然だから(でも、「とてもイヤそうな」表情は隠すことができず)、プチドラをクッション代わりに下に敷いて、「よいしょ」と。その際、プチドラは、「グェッ!」と悲鳴を上げた。

 スヴォールは、チラリとプチドラに目を遣り、

「ウキッ? あまり見かけない生き物だな。このオレに『あまり見かけない』と言わせるとは、大したものだ。しかし、オオトカゲにしては、トカゲらしくない。それに、オオイモリにしても、イモリらしくない。これは、ウキキッ!?」

 などと、ひとりで何やらブツブツとつぶやいていたが、やがて、パターソンに顔を向け、

「そう言えば、なんだっけ? ウキッ!」

「あなたの研究を援助したい、また、研究完成の暁には、その成果をお譲りいただきたいということです。具体的に申し上げますと……」

 パターソンはニコニコと愛想笑いを交え、スヴォールが完成の手前まで研究を進めている重武装人造人型兵器について、その研究資金の援助を行うとともに、研究成果であるその人型兵器を相当数購入したいという旨、説明を始めた。しかし、スヴォールは、説明の間、「ウキキ!」とか、「ウッキャー!」とか、非常に耳障りな声を上げたり、壊れそうな机をバシバシと平手でたたいたり、「史上最強の兵器なのだ。これさえあれば、すぐにでも世界が○○○に! 世界を○○○の海に沈めてしまえ!!(なお、○○○は筆者の自主規制)」などと、意味不明の合いの手を入れたりして、まったく落ち着きがない。パターソンも、スヴォールの機嫌を損ねないようにということで、いちいちうなずいたり相槌を打ったりしているので、話がなかなか進まない。それでも、ようやく、話が始まってから30分あるいは40分程度経過すると、

「ウキキ! 分かった。了解。話に乗ってやろう。その代わり、研究費を忘れるなよ」

 スヴォールは、ピョンと壊れた机の上に跳び上がり、両手でパターソンの右手を握りしめた。一応、研究の委託契約は成立と見てよさそうだ。


 その後、わたしたちはスヴォールに、研究資金は近日中に必ず持参すると約束し、早々に、超が付くほどにくさい住居兼研究所を出た。スヴォールは、機嫌よく見送りに出てきたけど、かえって迷惑というもの。

 なお、クッション代わりになってくれたプチドラに対しては、「近日中に世界の銘酒詰め合わせセットをプレゼントする」と約束して、機嫌を直してもらった。

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