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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第6章 ぶっ壊れて逝っちまっている錬金術師
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錬金術師の住居兼研究所

 馬車は、神がかり行者を遠巻きにしつつ、やがて、公園を離れた。

 わたしは、神がかり行者の姿が見えなくなったところで、「ふぅ」とひと息、

「あの基地外じいさん、演説に夢中になっていたみたいね。気付かれなくて、よかったわ」

「確かに。でも、あの老人のことですから、もしかしたら……」

「ダメッ! 変な想像しないで!!」

 わたしは、あわててパターソンの口を押さえた。突然のことに、彼は「えっ」と、目を白黒させている。言霊信仰ではないが、あの神がかり行者のことだから、「もしかしたら、馬車の屋根にへばりついていて、しばらくすると窓をコンコンと」みたいな不吉な想像をすると、その想像が現実化しかねない。その危険は多分にある。

 しかし……

 幸いなことに、特段、事件が発生することなく、馬車は、市街地から中流市民の居住地区へ、さらに、下層階級の居住地区へとゆっくりと進んでいった。窓から見える景色も、それに伴い、だんだんとうらぶれて貧相なものに変わっていく。ともあれ、今日のところは、神がかり業者をやり過ごしたと見てよさそうだ。


 その後、馬車は何度か向きを変え、やがて、両脇に粗末な家々が立ち並ぶゴミゴミとした狭い通りに、ノロノロ運転で進入していった。

 パターソンは、窓から外の景色を眺めながら、

「もうそろそろ到着します。でも……」

 そう言いながら、パターソンは、真っ直ぐにわたしの方に向き直り、

「本当に、よろしいのですか? 考え直されるなら、今のうちですが……」

「能力が高ければ、人格は問わないわ」

 性格的あるいは人格的に、ぶっ壊れているか逝っちまっているほど問題のある錬金術師が、どの程度のものか知らないけれど……、多分、大丈夫だろう(と、根拠のない楽観)。


 程なくして、馬車はスピードを更に緩め、下層階級居住地区の一角に停車した。

 パターソンは、「最終的意思確認」の意味だろう、何やら神妙な表情になって、

「着きました。では、カトリーナ様、お覚悟はよろしいですか?」

 わたしは無言でうなずき、プチドラを抱いて馬車を降りた。舗装されていない道には土埃が舞い、なんとも言いようのない、ひどい匂いがただよっている。

「あの~、パターソン、あそこにある、あの……アレは、何?」

「あれは……錬金術師の住居兼研究所ですが。」

「一応、それは分かるわ。でも、その上に乗っかっている、アレ……」

 目の前には、異次元チックな、言うなればカラビヤウ図形みたいな、なんとも形容しがたい建物が立っていて、その上には、とぐろを巻いた、巨大な、某「排泄物」のような物体が、建物全体を押し潰すように……

「あれは……ですね、つまり、錬金術師は、異常な、いわゆる『糞便マニア』なのです。」

 ナンセンスな下ネタ満載のギャグマンガじゃあるまいし、『糞便マニア』って……

 しかし、パターソンは唖然とするわたしをよそに、入り口のところに歩み寄り、軽くドアをたたいた。

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