ぶっ壊れて逝っちまっている人たち
「そんな錬金術師がいるなんて、知らなかったわ。こちらから出資する必要があるというのが、少し引っかかるけど……、その錬金術師、今までよく在野に埋もれてたわね」
御都合主義の問題は、この際、考えないことにしよう。ともかくも、本当に、一人(あるいは一体)で軍団を一つ壊滅させることができるような重武装人造人型兵器を手に入れることができるなら、その兵器は、少数であっても、マーチャント商会の軍勢に十分に対抗できる戦力となるだろう。ドラゴニアに派遣する軍事顧問団に紛れ込ませるための理屈は、後から適当に考えることにしよう。
わたしは、なんとなくスッキリ感をもってパターソンを見上げ、
「じゃあ、基本的に、問題は解決と考えていいのね。お金を出して、その錬金術師に研究を完成させてもらいましょう」
ところが、パターソンは、思いの外、難しい顔をして、
「しかし、少々厄介なことが、いくつかありまして……」
「『厄介なこと』というと、研究費のこと? マーチャント商会が接触していないということは、相当に、いえ、かなり高額になりそうな気もするけど、仕方がないわ。金額にもよるけど、その重武装人造人型兵器が完成するなら、こちらから出す研究資金は、長い目で見た投資と考えましょう。仮に、将来的には量産が可能みたいな話になれば、その時に、例えばマーチャント商会に高値で売りつけて、投下資本を回収すればいいから」
「確かに、その点は、そうなんですが、ただ……」
「『ただ……』って、なんなの? パターソン、さっきから、なんだか、煮え切らないというのか、何というか……、今日は少し変よ」
すると、パターソンは、ここで「はぁ~」と大きく息をはき出し、
「そうですか、そう見えますか。しかし、それは……、困ったな……」
と、腕を組んだ。見た感じ、本当に困っているような様子。パターソンは、その姿勢のまま数秒間考え、やがて、意を決したかのように、
「では、正直に申し上げしょう。つまり、その錬金術師との接触は、あまりお勧めできない、いえ、できれば、考え直していただけないかな~と、考えているのです」
「えっ!? ここまで話して、考え直すの? 冗談でしょう。それは、どうして??」
パターソンは、おもむろにゴホンと咳払いをすると、
「その錬金術師は、先ほども、『相当な変わり者』申し上げましたが、相当に……いや、ものすごく問題がある人物でして、性格的あるいは人格的に見て、ぶっ壊れていると言いますか、逝っちまってると言いますか……」
「へぇ~、そうなの。でも、能力が高いなら構わないわ。ノー・プロブレムよ」
「えっ!? 本当に?」
パターソンは口を大きく開け、首をかしげた。でも、わたしの周りには、ツンドラ候にせよ神がかり行者にせよ、ぶっ壊れて逝っちまっている人たちばかり。基地外の知り合いがひとり増えたところで、どうということはないと思う。




