怪しげな錬金術師の情報
パターソンは「う~ん」と腕を組み、
「派遣が許される軍事顧問団に当たるかどうかということはありますが、超人的な強さという点では、心当たりがないわけではなく……」
「そうなの!? 心当たりがあるのね。一体、誰? もしかして、実は、一子相伝の暗殺拳法の使い手とか、実は別の世界から来たスーパーが付くエイリアンとか??」
「いえ、それとは少し……いえ、かなり違うのです。ただ、どうでしょう。かなり怪しげな噂のある、本当に得体の知れない人物ですから……」
パターソンは「あ~」とか「う~」とか言いながら、本気で「その得体の知れない人物」のことを話してよいものかどうか悩んでいるような様子。でも、ここまで気を持たせては、「やっぱり、やめましょう」では、絶対に済まないところ。
「何を『あーうー』言ってるの? さっさと白状しちゃいなさいよ」
「本当に申し上げてよろしいのでしょうか。後になって、『やはり、知らない方がよかった』ということも有り得るのではないか、しかも、その可能性は相当に高いとも思いましたので。でも、やっぱり、聞かずにはいられませんか?」
わたしは「当然」というように、大きくうなずいた。
すると、パターソンは、「しょうがない」という顔をして、
「では、お話ししますが……、けっして後悔なされないように」
と、丁寧に前置きをしたうえで、
「この帝都の片隅に、少々……いえ、相当に変わり者の、しかし、能力的には帝国で十指に入るくらい有能な『マッドサイエンチスト』とも言うべき某錬金術師がおりまして……」
パターソンの話によれば、帝都の(スラム街に近い)下層階級の居住地に、極めて優秀な錬金術師が住んでいるという。その正体については、付近の住民の間では「本当は高貴な生まれではないか」という噂もあるが、正確なところは不明で、このところ重武装人造人型兵器(ファンタジー風の表現としては、アイアン・ゴーレムあるいはブロンズ・ゴーレム辺りか)の研究を進めており、しかも、その研究は、現在、完成の一歩手前だという。
「そうだったの。なんだか、『超』が付くほど御都合主義的な話だけど、好都合ね。じゃあ、すぐにその錬金術師に依頼して、その『重武装人造人型兵器』を作ってもらいましょう」
「いえ、ところが、ここからが重要なところなのですが……」
パターソンは、話を続けた。それによると、その錬金術師の研究は、現在、研究資金の不足のため、完成間近でストップという状況にあり、研究を完成させるためには、それなりの(あるいは、相当な)資金を与える必要があるとのこと。
「早い話、スポンサーになって、お金を出すということなのね」
と、わたしは思わずため息。結局、何をするにも資本が必要ということは、どの世界でも変わらないようだ。ちなみに、パターソンによれば、「この錬金術師の話は、マーチャント商会も知っているはずだが、いくら資金をつぎ込めば研究が完成するか分からないので、同社として、この錬金術師と接触しようという動きはない」とのこと。




