表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第5章 宮殿の中庭
43/293

「合理的」、何度でも言うけど「合理的」

「ドラゴニアのワイン産地じゃと!?」

 帝国宰相は目を丸くして、先ほどよりもっと大きく口を開けた。

「いけませんか? 合理的な対価なら、当然、お支払いする用意はあるのです。おそらくは、マーチャント商会はワイン産地にも抵当権など設定しているのでしょう。法技術的には、その権利をわたしが買い取るというような形で」

「なっ…… しっ、しかし……」

 わたしの返答は、帝国宰相にとっては、混乱しているのが誰からも目に見えて分かるくらい、完全に想定外だったようだ。

 他方、マーチャント商会会長は、全く心を乱されるような様子もなく、

「つまり、ドラゴニアのワインワイン産地に関する権利を売ってくれということかな。そういう提案なら、我々も商人だから、交渉の余地はある。最初にそう言ってくれればよかったのだがね」

「分かったわ。代金は、できれば現金一括払いで払うわ。金額は、基本的には、マーチャント商会側の言い値でいいから。でも、合理的な対価よ。『合理的』の意味は、当然、御存知よね。何度でも言うけど、『合理的』だからね」

「そう何度も言わなくてもいい。今の提案は、十分、検討に値する。なぜならば、『できれば現金一括払い』との提案は、非常に魅力的なものだからだ」

「じゃあ、これで、基本的に取引成立と見ていいのね」

 すると、マーチャント商会会長は、無言のままではあるが、「肯定」の意味であろう、大きくうなずいた。会長は、この期に及んでも、先ほどと全く変わらずメカニックな無表情なままだけど、内心では、一体、何を考えているのだろう。


 ちなみに、わたしの腕の中では……

「ワ~イ~ン、ワ~イ~ン、ドラゴニア~の~ワ~イ~ン!」

 と、プチドラは、喜びの感情を爆発させていた。

 ドラゴニアのワイン産地に係るマーチャント商会の権益がいかほどのものか、現時点では分からないが、ドラゴニアに安物の(それどころか、飲んだら命に関わるような粗悪品の)ワインしか残っていないところから考えれば、ある程度以上の品質のワインは、悉くマーチャント商会への債務の代物弁済として取り上げられているに違いない。わたしがマーチャント商会に代金を支払えば、理論構成はともかく、わたしがマーチャント商会に成り代わって、ワイン産地において、債権者としての(現時点では、マーチャント商会の)地位及び債務回収のため必要なことを行う権利を得ることができるだろう。こうすれば、ドラゴニアから領土を割譲してもらわなくても、少なくとも、プチドラの欲求だけは満たすことができる。あっさりと併合という方が分かりやすいけど、あくまでも領土(言い換えれば、土地)に拘泥することはないと思う。


 ところが、ただ一人、

「いや、ちょっと待て。いくら平和を守るためとはいえ、それは……」

 どういうわけか、帝国宰相だけは、納得がいかない様子だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ