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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第5章 宮殿の中庭
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帝国宰相は本気モード

 わたしは、宮殿の正面玄関で、プチドラを抱いて馬車を降り、テクテクと宮殿の長い廊下を進んだ。

 プチドラは、ひとつ「ふぁ~」と大きな欠伸をして顔を上げ、

「マスター、念ために聞くけど、帝国宰相の居場所は分かってるんだよね。」

「さあ、知らないわ。そもそも、あの爺さんがどこで何をしてようと、わたしには興味も関心もないし……」

 わたしは足を止め、ぶっきらぼうに言った。

 プチドラは「あらら」と、小さい手を額に当てて天井を仰ぎ、

「この前に、『宰相政務室』って、教えてもらったと思うんだけど……」

「そうだっけ? そんなこともあったかもしれないわね。でも、いつものことだから、そのうちに廊下の先からフラフラと歩いてくると思うわ。わたしの顔を見るなり、例の猫撫で声で『わが娘よ』って、バカのひとつ覚えみたいに……」


 その時……、まさにその時といったところだろう。不意に、わたしの背後から、

「おお、わが娘よ、捜したぞ!」

 聞き覚えのある(イヤになるくらい聞かされた)、話題にしていた老人の声が響いてきたので、ビックリ(まさに神出鬼没、一体、どこから現れたのだろう)。

 わたしは背後を振り返るなり、とりあえずは愛想よく笑みを浮かべ、

「あらあら、これはこれは、いつもながら御機嫌麗しく、肌の色つやは年不相応に若々しくていらっしゃいますね」

 声の主は言うまでもなく、帝国宰相だった。


 帝国宰相は、ブスッと不機嫌な顔をして、

「年は取りたくないものじゃな。わしも最近はもうろくしてしまってな、同じことを何度も繰り返す癖がついてしまったものじゃ」

「いえ、そのようなフィードバックによる反復学習こそ、幼児……いえ、若さの証明でございますことよ。オホホ……」

「減らず口をたたきおって! まあ、よいわ。呼んだのは、このわしじゃからな」

 帝国宰相は、呼吸を整えるようにチッと舌打ちすると、

「来てもらったところで、早速じゃが、本題に入りたい」

「いきなりですね。それほど急ぐ話なのでしょうか」

 そう言うなり、わたしは「はぁ~」と、少々長めのため息。

 しかし、帝国宰相は、ギロリと鋭い眼光をわたしに向け、

「茶化すのは止めよ。今日呼ばれた理由は、おまえが一番よく分かっているのではないか。いや、この期に及んで『知らぬ存ぜぬ』は、通用せぬぞ」

「はい? わたしが『一番よく分かっている』と??」

 帝国宰相は、射るような視線でわたしをにらんでいる。見た感じ、今日の帝国宰相は、相当に本気モード。洒落や冗談の類は通用しそうにない。今日に限っては、下手に刺激しない方がよさそうだ。

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