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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第4章 デフォルトと戦争
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帝都に戻って

「ふわぁ~~…… っぷっぷっぷ……」

 ここは帝都の一等地、わたしの屋敷。アンジェラとともに隻眼の黒龍の背に乗って早々に帝都まで戻ってきたわたしは、面倒なこと(すなわち、マーチャント商会との戦争に備えて、本国での動員やら糧秣の確保やらその他諸々)について、パターソンを信頼して彼に全面的に委任し(有り体に言えば、押しつけ)、その結果、(わたし自身としては)特に何もすることなく応接室でまどろんでいた。

 ちなみに、マーチャント商会との戦争の不可避的な可能性を告げたときのパターソンの反応は、まさに青天の霹靂という表現がピッタリ。一瞬の沈黙の後、珍しく「ええーっ!?」と大きな声を上げ、「本当ですか」と何度も聞き返した。わたしから「行きがかり上、ドラゴニアと共同戦線を張ることになりそうだけど、わたしとしてはタダでドラゴニアを助ける気は毛頭なく、見返りにドラゴニアのワイン産地を要求するつもり」と説明してみたが、パターソンは「見返りを求めるとしても……」と、非常に懐疑的な様子。でも、「もう決まったことだから」と、半ば職務命令として強引にねじ込むと、パターソンとしても返す言葉はなく、最終的には「御意のままに」ということで落ち着いた。

 なお、わたしとパターソンの問答の間、プチドラは「えへへ……」とだらしなく口を開け、よだれを垂らしていた。見返りであるドラゴニアのワイン産地のことで、頭がいっぱいなのだろう。


「え~っと、アンジェラさん、おつかいに行きましょう。これから、え~っと……、なんだかよく分かりませんが、大変なことになるそうですから、大変なことには大変な備えで望まないと。備えあれば、うれしいな……でしたか、あれっ?」

「正しくは、『備えあれば憂いなし』では?」

 屋敷では、わたしとアンジェラが戻ったその日から、再び、アメリアとアンジェラによる天然ボケ・ツッコミのコントが繰り広げられている。アメリアは相変わらずのようだ。ただ、帝都に戻ってからのアンジェラの表情は、どことなく晴れないような気もしないではない。

「やっぱり、いきなり戦争だから、アンジェラにとって刺激が強すぎたのかもね」

 と、これは、アンジェラの心情に関するプチドラの分析。

「そうなの? でも、戦争って言ったって……」

 マーチャント商会と戦争するとしても、戦場はドラゴニア以外に考えにくく、帝都にいれば安全のはず。帝都で高みの見物を決め込んでおけば、問題ないのではないか。


 でも、それはさておき…… ソファの上に横になり、ぼんやりと天井を眺めていると、

「おくつろぎ中、失礼いたします」

 両手に資料を抱えたパターソンがやって来て、

「カトリーナ様の仰せのとおり、本国に動員命令等々をしたためた書状を送りました。『できるだけ急いで』と付記しています。そして、もうひとつ……、むしろ、こちらが問題かもしれませんが……」

 パターソンは何やら微妙な顔つきになって、資料の間から一通の書状を取り出した。

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