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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第4章 デフォルトと戦争
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楽しい「話し合い」に

 アース騎士団長は、「ふぅ」と小さく息を吐き出し、

「お席まで案内いたします……と言っても、昨夜と同じ席ですが」

 騎士団長は苦笑いしながら、わたしとアンジェラを連れ、正面の御曹司のところまで進んでいく。正面の席には、既に御曹司がニコニコと満面の笑みを浮かべて座っていた。

「この、お調子者が!」

 アース騎士団長は御曹司の姿を見るなり、小さな声ではあるが吐き捨てるように言った。御曹司との間に何があったのか知らないけど、今の騎士団長の御曹司への忠誠心は、歴史シミュレーションゲームに例えてみれば、簡単に引き抜き可能な水準にまで低下していることだろう。

 しかし、騎士団長は、御曹司をすぐ目の前にすると、憤懣やるかたない内心を表に出すことなく、極めて理想的に事務的な表情を整え、

「ウェルシー伯をお連れしました。」

「御苦労であった。今日は、ドラゴニアの運命が決まる。まあ、見通しは明るいがな。はっはっはっ!」

 御曹司は、既に自らの策が成功しているかのような口ぶりで言った。


 わたしは(ややおっさん的に)「よいしょ」と、御曹司の隣に腰を下ろした。わたしの隣にはアンジェラが座り、その隣にはアース騎士団長がどっかりと腰を下ろす。さらにアース騎士団長の隣には、マーチャント商会の代理人の席であろう、空席が3つ。マーチャント商会の連中は、商人の分際でもったいぶって、一番最後に現れるつもりだろうか。気分的には、なんとなく不愉快というのか、すっきりとしないものも……

 ともあれ、正面の席でプチドラを膝に乗せ、その二日酔いに苦しむ寝顔を眺めていると、不意に、御曹司が立ち上がり、

「そろそろ時間かな。では、この私自らが直々に案内することにしよう」

 すると、アース騎士団長は、御曹司を冷ややかな視線を送り、ひと言、

「御意に」

 御曹司は、アロハシャツをさらにアロハにしたみたいな、なんとも言えない衣装をひらめかせ、スキップを踏むようにして「話し合い」の会場を出た。


 騎士団長はチッと舌打ちし、天井を仰ぎ、口を「へ」の字に結んで目を閉じた。並み居る騎士たちの間からは、「はぁ」とか「ふぅ」とか、ため息が漏れ、ひそひそ話が始まっている。どんな話をしているのか知らないけど、御曹司にとっては、少なくとも好ましい内容の話ではないだろう。騎士団長からも(本人のいないところだけだと思うけど)「あのバカ」と言われてるくらいだから、騎士たちの間では、御曹司への罵詈雑言のオンパレードが交わされているのではないか。あるいは、単なる悪口ではなく……

 ちなみに、末席に座っていたニコラスは立ち上がり、彼の友人であろう数名の騎士たちの間を行ったり来たりして、何やらヒソヒソと内緒話をしている。ニコラスは、おそらく、わたしの期待どおりに動いてくれるだろう。楽しい「話し合い」になりそうな気配。

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