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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第4章 デフォルトと戦争
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騎士団長の疲れた表情

 わたしは、公式な場で着用するためのパリッとしたドレスに着替え、持ってきた風呂敷包みから、ご隠居様より譲り受けた伝説のエルブンボウを取り出した。

 ニコラスが仲間とともにゲリラ的に「反対」を連呼するなら、「話し合い」は御曹司の目論見どおりには進まないだろう。御曹司がどんな顔をするか、見ものではある。

 また、アース騎士団長も御曹司の「情けなさ」に愛想をつかしているなら、場合によっては(あるいは、希望的観測としては)、騎士団長及び多くの騎士がニコラスに賛同することになるだろう。その場合、「話し合い」の場は、もっと、わやくちゃに……

 さらに、わたしが伝説のエルブンボウをかざし、適当に「先代ドラゴニア候の遺訓が云々」みたいな口上で追い打ちをかければ、「話し合い」はまったく収拾がつかなくなって……、とにかく、予想もしていないことが巻き起こるかもしれない。

 わたしは、二日酔いでぐったりとしているプチドラの尻尾をグイと引っ張り、ひと言、

「しっかりしなさい。行くわよ」


 わたしはプチドラを抱き、伝説のエルブンボウを持ち、アンジェラを伴ってドアを開けた。

 部屋の外では、騎士団長が待ち構えていて、

「準備はお済みのようですな。では、まいりましょう」

 アース騎士団長はわたしたちを先導し、別次元のような廊下をやや早足で歩いた。よく見ると、騎士団長は少々疲れたような表情を見せ、途中、何度もため息をついている。どうしたのだろうか。騎士団長の疲れた表情が関係するものと言えば……

 わたしは、足を止め、

「つかぬことをお伺いしますが、もしかすると、昨夜の宴会が終了後、その続きで何か騒動のような?」

 すると、騎士団長も立ち止まり、力の抜けたような声で、

「ええ、ちょっとね。わが主君といったら、本当に、あのバカ……いや、いけない。失礼しました。止めにしましょう。それよりも、ウェルシー伯、本日の『話し合い』に対してどのように臨まれるのかということですが……」

 わたしは適当にすっとぼけたフリをして、

「『どのように』ですか。いまいち意味がよく分かりませんが、おそらく、なるようになるのではないかと思いますよ」

「そうですか…… いや、そうですね。それ以外、なりようがないかもしれませんな」

 騎士団長は「ははは」と、あまり力のない声で笑った。


 やがて、わたしたちは、昨日の宴会場の前に到着し、アース騎士団長がドアを開けた。その中をのぞきこんでみると、正面には、御曹司を含む数人分の席が横向きに設けられ、そこからクラゲの足状に騎士団の席が縦に長く伸びている。これは、昨夜と同様、よくある団体さんの忘年会や温泉旅行みたいな席の配置。ただひとつ違うところは、正面の席が3人分ほど増やされているということで、この席は、マーチャント商会の代理人用だろう。

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