翌朝
翌朝……と言っても、どちらかと言えば昼前に近い時間、美少女フィギュアが四方の壁に沿って、まるで壁を埋めるように並べられた部屋にて……
「お姉様、お姉様!」
不意に、アンジェラの声が(比喩的な意味で)眠っているわたしの頭の上を飛び回り……
「失礼いたします。無礼は承知の上ですが、止むを得ず…… 起きて下さぁい!」
加えて、中年のオヤジっぽい声が響いた。これは……? アース騎士団長??
そして……
「お姉様!! お姉様!!!」
「お願いします!! 起きて下さぁい!!!」
「えっ? 何!? どうしたの???」
突然、わたしの体は、まるで巨大地震に遭遇したかのように、激しく揺すぶられ、
「もうすぐ『話し合い』が始まります。おいでにならなければ、欠席裁判のごとく、とんでもない結果になる可能性もあります。起きて下さい。お願いします!」
「一体、なんなのよ…… 本当に……」
寝ぼけ眼をこすりつつ体を起こしてみると、目の前には、果して、アース騎士団長の顔があった。その傍らでは、アンジェラが「やれやれ」といった顔でわたしを見下ろしている。
ちなみにプチドラは、だらしなく部屋の壁にもたれかかり、美少女フィギュアに埋もれて「オエ~ッ」とグロッキー状態。粗悪品のアルコール類を飲み過ぎて、二日酔いになっているようだ。自称「アルコール大王」も、これでは形無しだろう。
アース騎士団長は、恭しく頭を下げ、
「おはようございます。実は、今朝方から、何度かこの部屋に参りましたが……、つまり、なんと申し上げますか、表現が難しいのですが……」
なんだか歯切れの悪い言い方だけど、騎士団長によれば、もうしばらくすると懸案の「話し合い」が始まるので、有り体に言えば「さっさと起きて用意をしてください」とのこと。なお、アンジェラは、騎士団長が最初にこの部屋を訪れた時には目を覚ましていて、既に朝食を済ませたらしい。
ここで、アース騎士団長は、おもむろに咳払いを一つして、
「少々申し上げにくいのですが、この時間からでは、ゆっくり朝食を取っていただく時間はなさそうですので……」
「いえ、朝食は結構、遠慮させてもらうわ。わたしは朝食を食べない主義なの」
「ほぉ、そうですか。しかし、まあ……」
と、騎士団長は苦笑い。わたし的には、「腹が減っては戦はできぬ」が座右の銘のつもりだけど、(昨夜の)宴会でさえマトモなものが出てこなかったのだから……、今日だけは食事を抜くも仕方がないといった気分。
「ならば、これから『話し合い』の会場に、場所は昨夜の宴会場ですが、案内いたします。部屋の外で待っておりますので、着替えなどが済み、準備ができたところで声をかけて下さい」
騎士団長はそう言って、部屋を出た。




