とりあえず打つ手なし
こうして、ドラゴニア騎士団は(ともかくも敗戦ということで)失意のうちに、先程までいた広場にゾロゾロと戻っていった。ドラゴニアン・ハート城に向かった時とは違って、隊列はバラバラで、騎士たちは悔しさを紛らわすように、「くそっ」とか、何やらブツブツとつぶやいている。
そして、騎士団の後にはわたしたちが続き……、ついでに言えば、最後尾では、プロトタイプ1号機が例によって、ガシャン、ガシャンという金属音とともに「ウガガッ、ウガガッ」と大声を上げながら歩いている。前を歩く騎士たちは、時折、後ろを振り返り、プロトタイプ1号機に目をやると、「ちっ」と舌打ちを繰り返している。内心、かなりイライラが募っているようだ。
ともあれ、程なくして、ドラゴニア騎士団は広場に到着した。
アース騎士団長は、すぐに騎士たちに向き直り、
「諸君、本日は、予想外に手ごわい敵に遭遇した。我々騎士団の面目にかけて、一気に粉砕といきたいところだが、冷静に考えると、力攻めは少々考えものだ」
ここで、騎士団長は、「ふぅ~」と大きくため息をついた。広場にいる騎士たちは、悔しさを表現しているのだろう、「うう~」とうめき声ともうなり声ともつかない声を上げたり、地面を蹴飛ばしたりしている。
「そこで……」
と、アース騎士団長は渋い表情で、
「作戦の実行は、明日以降に延期したいと思う。どうすれば我が方の犠牲を少なく敵を打ち破ることができるのか、少々考える時間がほしい」
すると、広場にいる騎士たちから、「あぁ~」と、やや悲鳴に近い落胆のどよめきが起こった。しかし、騎士たちにも、ドラゴニアン・ハート城にいた正体不明の鎧武者たちを今すぐどうこうできるわけがないことは、分かっているのだろう(わたしには、大方の察しはつくが……)、表情に不平不満を表してはいるものの、反対を表明する者はいない。
やがて、騎士たちは、帰途につくのだろう、次々と広場を離れていった。
そして、ほとんどの騎士が広場を去ったところで、アース騎士団長が数名の騎士を連れ、わたしたちの前にやって来て、
「ウェルシー伯、本日は、まことに見苦しい場面を…… まさか、あのような敵が城内にいるとは、我々にはまったく予想外で……」
と、悔しさを満面に表しながら言った。
そして、アース騎士団長は「ゴホン」と、気を紛らわせるかのように咳払いをして、
「では、ウェルシー伯、宿舎まで案内いたします。先ほど急いで手配いたしました。満足いただけないかと思いますが、とりあえずは……」
「いえいえ、お気遣い、恐れ入ります」
先ほどというと、わたしたちが街を散策していた短い間のことだろう。手回しのいいことだ。アース騎士団長は、武人より行政官の方が向いているのではないだろうか。




