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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第22章 とりあえずの平穏
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事態は好転?

 ニューバーグ男爵が泣きながら語るところによれば、新ドラゴニア侯がスヴォールに入れ替わって以降、宮殿で「新ドラゴニア侯がおかしい」と言われた場合には、パーシュ=カーニス評議員とともに「大地の精霊の怒りに触れて地中深くに引きずり込まれているうちに人が変わった」と、なんとかごまかしてきたが、最近ではその理屈にも「限界が近づいている」とのこと。

 しかも、宮殿での新ドラゴニア侯に関する話は、彼がドラゴニアに赴任した後に止むのではなく、それどころか、「宮殿でおかしかった新ドラゴニア侯が、任地のドラゴニアでどんなバカをやらかすか」と、反対に貴族たちの興味をかき立てることになってしまい、さらに、帝国宰相からも、「グローリアスは、ちょっと……いや、かなり変わった感じだが、ドラゴニアではうまくいっているのか」と、時々話を振られるようになったという。そのため、ニューバーグ男爵は、最近では、帝国宰相の姿を見るだけでも胸の動悸が治まらず、宰相とのちょっとした会話でも額に脂汗がにじむようになったとか。

 ニューバーグ男爵は、わたしの目の前で胸元をかきむしるようにして、

「もう限界です! 助けてください!! 私には、もう……」

 と、鳥の断末魔のような声を上げた。


 わたしは「ふぅ」と息を吐き出し、パターソンと顔を見合わせた後、

「大丈夫ですよ、ニューバーグ男爵。そうですね…… あと一年、いや、半年……あるいは三か月くらいのうちに、きっと事態は好転しますよ」

「ええ!? それは、本当ですか? 事態が好転するとは、これは一体?? 私には見当がつかないのですが、何かうまい方法でもあるのでしょうか???」

「だから、心配しないで、ツンドラ侯にもよろしく伝えてください」

 わたしはそう言いつつ、パターソンに目で合図を送り、

「そういうことですので、今日のところは申し訳ないのですが、これにて……」

 と、ソファから立ち上がり、ニューバーグ男爵に深々と頭を下げた。パターソンは、応接室のドアを開け、有り体に言えば「今日はこれでお引き取りを」のジェスチャー。

 ニューバーグ男爵は、「大丈夫なのですね! 本当にそうなのですね!!」と叫びつつ、パターソンと若干名の駐在武官(親衛隊)に抱えられるようにしながら、応接室を出た(厳密に言えば、「放り出された」と記述されるべきかもしれない)。


 数分後、男爵を見送ったパターソンが応接室に戻ると、

「カトリーナ様、ニューバーグ男爵はお帰りになりました。ところで……」

 わたしはパターソンを横目に、もう一度「ふぅ~」と今度は長めに息を吐き出して、

「言いたいことは分かるわ。『事態が好転する』の意味でしょう。でも、あれは口から出任せ。意味なんてないわ。ただ、ああでも言わないと、あの人、帰らないから」

 パターソンは苦笑しながらも、意図は通じたのだろう、何度もうなずいている。いかなる意味でも常識人のニューバーグ男爵にとっては、ツンドラ侯のハチャメチャな命令には慣れているとしても、犯罪行為に係る秘密の共有は荷が重すぎたのかもしれない。

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