今日は厄日なのだろう
応接室のソファに腰を下ろし、「ふぅ~」と一服すると、パターソンが毎度のパターンで朝昼兼用食をもって応接室に現れ、
「おはようございます、カトリーナ様」
「おはよう……」
気分的には、このままソファで横になって、もうひと眠りしたい感じ。このところは、取り立てて言うほどのことはなく、宮殿のトンチンカンな暴走老人(これは、言うまでもなく、帝国宰相のこと)の呼び出しもなく、一応、平穏が保たれている状態。ただ、あまり平和すぎるのも考えもので、有り体に言えば、ヒマ……、ヒマすぎて刺激が足りなさすぎて、早い話、間がもたない。
ところが、今日は、そういった平和そのものの雰囲気でもないらしく、
「カトリーナ様、実は…… 食事を終えられたら、お話しますが……」
パターソンが眉間にしわを寄せ、難しい顔をして言った。彼がそう言って切り出してくるからには、「少々」か「相当」か「非常に」かはともかく、面倒なことが持ち上がってきたに違いない。
わたしは、帝国東方の山岳地帯で採れた珍しい山菜を中心とした、ヘルシーかつ質素な朝昼兼用食を食べ終えると、
「ごちそうさま。珍しいのはいいけど、味は普通の山菜とあまり変わらないわね。それはそれとして、パターソン、さっき言ってた『実は』の次は何?」
「実は……、『実は』が繰り返しになりましたが、結論的に申し上げますと、少々面倒なことが持ち上がってきたということです。先ほど、マーチャント商会から使者が二名、屋敷まで来られまして……」
マーチャント商会というと、用件は、重武装人造人型兵器に係る会長との約束に関することだろう。であれば、面倒の程度は「少々」ではなく、「相当」か「かなり」くらいが妥当ではないか。
わたしは「ふぅ」と、ため息をつき、
「適当に言いくるめて追い返すわけにいかないかしら?」
「それは試みてみました。『適当に』ではなく相当頑張って理屈をこねてみましたが、彼らが言うには、カトリーナ様と話をするまで帰れないということで……」
パターソンは、見た感じ、「お手上げ」といった表情。そういうことなら、やはり、面倒さ加減は「少々」ではないでのはないか。
「カトリーナ様、一応、『問答無用、とにかく帰れ』と追い返すことはできますが、いかがいたしましょうか。あまり事を荒立てるのも……」
「詰まるところ、選択の余地はないということでしょう。仕方ないわね。ここに通しなさい」
パターソンは、「御意」と頭を下げると、テーブルの上を綺麗に片付け、応接室を出た。久しぶりに朝からいきなり気分の重い展開だけど……、今日は厄日なのだろう。きっとそうだ。




