屋敷における最近の日常
新ドラゴニア侯、すなわちスヴォールがドラゴニアに向けて旅立ってから、約2か月が過ぎた。その間は事件も事変もなく、ハッキリ言うと、とりあえずはヒマ。
わたしは例によって、毎度のパターンを崩すことなく、
「ふわぁ~~……、眠い……」
と、寝室のベッドの中で暖かさに包まれながら猫のように丸くなり、昼前まで朝寝坊。
ただ、今までは、半分眠っているわたしの傍らでプチドラがラジオ体操のような得体のしれないトレーニングをしていたけれど、最近は、少し様子が違って、
「マスター、うぃ~、いいねぇ、やっぱり、いいねぇ~」
プチドラは、このところ、目覚めた後にドラゴニアから送られた高級ワインをラッパ飲みするのが日課になっている。
このワインは、ドラゴニア直送の高級ワインであり、元々ドラゴニアが負っていたマーチャント商会への債務の一部をわたしが肩代わりすることによって、弁済者代位の効力として手に入れたもの。わたしのドラゴニアに対する権益は、その後、ドラゴニアにおいてローレンス・ダン・ランドル・グローリアスを新しい主君として受け入れ、マーチャント商会に対する債務が帝国政府に譲渡されて以降も、従前と変わらない形で維持されることになっている。つまり、ドラゴニア産高級ワインは、現在の債権者であるわたしに対し、債務の利息分に充当するためにドラゴニアから送られてきたと、こういうこと。
日が高く昇って昼近くになると、わたしはようやくベッドで身を起こし、服を着替え、飲み過ぎてフニャフニャになったプチドラを抱き、フラフラと(わたし自身は飲んでいないのに)千鳥足で、とりあえずは朝食兼夕食のため応接室に向かう。
廊下では、アンジェラとプロトタイプ1号機が仲よく、これも最近では日常的な光景となっているが、
「プロトタイプ1号機、こんなんこと、できる?」
「ウガガッ!」
「そう、その調子。さらに、もう少し、こう……」
「ウガッ! ウガガガガッ!! ガァーーー!!!」
ガッシャーン!
ちなみにこれは、アンジェラとプロトタイプ1号機がラジオ体操のように、腰に手を当てて背中を後方に曲げる運動をしているうちに、プロトタイプ1号機が勢い余って後方に頭から倒れ込んでしまったということ。仲よく遊ぶのは構わないが、屋敷を(備品も含め)破壊するようなことはやめてほしいのが正直なところ。
プチドラは、ボンヤリとした目で大きな頭をもたげ、
「うぃ~、マスター、何かあったの? この世の終わり?」
「そんなわけ、ないでしょ。プロトタイプ1号機がひっくり返っただけよ」
誰だっけ……、前に屋敷に居候していて今は行方不明の……、確かアメリア? 最近は、彼女がいた頃のような騒がしさが戻ってきたみたいな、そんな感じ。




