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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第20章 運命の日
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猛獣かモンスターのような大音声

 グローリアスは、ここで突然「ふぅ」とため息をつき、

「しかし、今更、こういう話をしても、仕方がないことだな……」

 と、独り言のように言った。この話は、多分、パーシュ=カーニス評議員が言ってたところの、グローリアスの兄か弟かが生まれてすぐに川に流されたという話のことをいうだろう。わたし的には、どうでもいい話だけど……

 そして、グローリアスは、わたしの方に向き直り、

「ウェルシー伯も既に聞き及びのことかと思うが、私は近々、ドラゴニアに赴任することになっておるところなのですよ」

「あら、そうですか。随分と気が早いですね」

 わたしとしては、こんなつまらない世間話は早く終わらせて、自分の屋敷に帰りたいところだけど、この小さくて貧弱なグローリアスには話を終わらせる気が全然ないらしく、

「本来なら、もう少し帝都に留まっていてもよかったのですが、そう言っておられない事情がありましてな。帝国宰相も、困りに困った末の決断のようで……」

 と、わたしの迷惑も顧みず語り続けるところによれば、この度の晩餐会は、ドラゴニア戦役関係者への慰労等が名目とされているが、実際には、悪化の一途をたどる帝国財政の足しに少しでもなればとの窮余策として始められたもので(その程度のことなら、既に察しはついている)、帝国宰相の本音としては、「当分の間」と称して、少なくとも2年か3年くらいは引っ張りたかったのだという。しかし、ドラゴニア戦役の一方の主役である(つまり、先鋒軍司令官の)ツンドラ侯がわけの分からない理由でグローリアスを憎み、「サッカーボールみたいにボロボロにしてやる」と公言しているので、このまま続けていると、何かのきっかけで(例えば、グローリアスとツンドラ侯の目が合って、ツンドラ侯が一方的に因縁をつけるみたいな形で)ツンドラ侯が大暴れすることになりかねず、やむを得ず、晩餐会としては今日が最後となったらしい。

 グローリアスは苦笑いか、「ふっ」と短く息を吐き出し、

「いやはや、晩餐会会場で不自然にならないようにツンドラ侯との距離を一定に保つというのは、簡単なようでいて、本当はテクニックが必要なところでありましてな」

「非常に神経を使うことですね…… はぁ……」

 ちなみに、「はぁ」は、グローリアスにつられたわけではないけど、わたしのため息。


 と、その時……

 ものすごく唐突だけど、突然、「うおぉぉぉ!」という猛獣かモンスターの雄叫びのような大音声が中庭に響き渡り、その後、ドタバタ、バタンなど物と物がぶつかるような音、「いけません」とか「場所柄をわきまえて」など悲鳴に近い男の声、「どけ、ニューバーグ」とか「ぶっとばしてやる」など怒鳴り声、「ハッハッハッハッハッ」という笑い声が聞こえてきた。

 グローリアスは、ビクッと体を震わせ、

「ひっ、ひぃ…… ウェルシー伯、今のは? 聞かれましたかな??」

「なんでしょう。けたたましいですね」

 わたしは「ふぅ」と、もう一度ため息。何が起こっているのか、大体、想像はつく。正直、余り想像したくないけど……

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