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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第20章 運命の日
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大人の対応

 とりあえずは、ツンドラ侯の視線に入らないよう身を低くして、「ハッハッハッ」の声のする方に行ってみると、

「いやー、ハッハッハッ! では、グローリアス殿は、まったく争う気はないと? なるほど、それは『金持ち喧嘩せず』というやつですかな。さすが、言うことが違う」

「いやいや、『金持ち』など、とんでもない。今のドラゴニアはこれ以上ないというくらい疲弊しているとのこと。ドラゴニアの経済と財政を再建することが、この私の務めであると心得ているところです」

 そこでは、この前と同じく(これは、ある種の御都合主義とも言えようが)、パーシュ=カーニス評議員と非常に背の低いポッチャリとしたお坊ちゃんであるローレンス・ダン・ランドル・グローリアスが、にこやかに談笑しているところであった。

「なるほど、それは正論ですな、ハッハッハッハッハ」

 一体何が面白いのか知らないが、パーシュ=カーニス評議員は相変わらずのようだ。


 ともあれ、パーシュ=カーニス評議員は、ひとしきり「ハッハッハッ」と笑った後、

「おや、そこにおられるのは、ウェルシー伯ではありませんか」

 と、わたしに顔を向けた。

 評議員の目に留まったからには(仕方ないので)、わたしからも社交儀礼として、

「これはこれは、パーシュ=カーニス評議員……」

 と、定型的な挨拶を交わそうとした瞬間、

「ウェルシー伯は御存じですか? こちらの新ドラゴニア侯のグローリアス殿が、もしかしたら今日こそ大変なことになるかもしれないのです。でも、グローリアス殿自身は、まったく争う気はないらしいですね」

「はい?」

「前に話しましたっけ? 体力だけが取り柄のツンドラ侯が、こちらのグローリアス殿を『サッカーボールみたいにボコボコに蹴り倒してやる』と息巻いているのです。特に、今日で晩餐会は最後ですからね。それに対し、グローリアス殿は、まさに大人の対応ですな。いつもそうだとのことですが、ツンドラ侯に口実を与えないよう、常に周囲に気を配り彼と鉢合わせにならないようにするとのことです」

 パーシュ=カーニス評議員は、本当に楽しそうに言った。この人は、自身の表現による「血の雨」を期待しているに違いない。

 他方、グローリアスはニコニコと笑みを絶やすことなく、わたしを見上げ(ちなみに、彼の身長は、わたしより頭二つ分くらい低い)、

「お会いしたことはあると思いますが、話をするのは初めてですな。私はローレンス・ダン・ランドル・グローリアス。この度、ドラコニアを拝命いたしました。ウェルシー伯、あなたの噂はかねがね伺っていますよ。帝国宰相とも懇意にされ、宰相もあなたを頼りにされているとか」

「これは、どうも……」

 わたし的には、正直、こんな男はまったくタイプではないが……

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