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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第20章 運命の日
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晩餐会会場では

 わたしとプチドラを乗せた馬車は、このところのパターンとして、ゆっくりした速度で宮殿に至り、宮殿前での順番待ちに伴うノロノロ運転を経て、やがて、宮殿の正面玄関に到着した。

 ちなみに、屋敷から宮殿までの道中、プチドラは「ふぅ~」と、ため息をつくことしきり。それがどういう意味かは、説明する必要はないと思う。今日で最後とのことなので、晩餐会で用意されているアルコール飲料に未練があるのだろう。

 プチドラは、そのためか、玄関にいた案内役の係員がわたし(及びプチドラ)を晩餐会会場まで先導していく間、小さな拳をグイと握りしめ、

「今日は、頑張って飲むぞぉ! でも、悪酔いしない程度に…… いや、酔ってもいいのかな。晩餐会が今日で最後なら、少しくらいは…… でも……」

 と、考えをまとめようとしているのか、何やらブツブツとつぶやいている。

 ただ、晩餐会が今日で最後ということは、ツンドラ侯の耳にも入ってるだろうから、そうであれば、ある意味、必然的に、

「今日みたいな『最後の晩餐』の日に、運悪くツンドラ侯の目に留まるようなことがあれば、ゲテモン屋で本当に『最後の晩餐』を味わうことになるかもしれないわ」

 すると、プチドラは、ブルッと身震いした。


 その晩餐会会場では、果して……

「みんなぁ! 乗ってるかぁ~い!! 今日は『最後の晩餐』だってな。ということは、今日も、いや、今日こそ、地獄の最奥部まで、とことん行くぞぉ、いや、絶対に、行かねばならんのだ!!!」

 と、普段にも増してハイテンションなツンドラ侯が、雷鳴が轟くような大声を上げていた。また、ツンドラ侯の傍らでは、ニューバーグ男爵が既に真っ青な顔をして「まあまあまあ」と、どうにかしてツンドラ侯をなだめようとしているが、サッパリ効果がない。

 わたしは晩餐会会場の入り口で、帝国宰相に対して心にもないお世辞等々を言いながら(なお、晩餐会が今日で最後と思えば、今までみたいに腹が立つことはない)、このところのパターンに則って、心付けを手渡した。

 ところが、今日の帝国宰相は、これまでの調子とは違って、

「わが娘よ……」

 と、ため息を一つ。そして、もうひと言、

「いや、やめよう」

 わたしは、思わず目が点。こんな帝国宰相は非常に珍しい。何があったのか気にはなるが、うっかり質問して「行きがかり上」みたいな形で巻き込まれたら面倒なことになる。宰相も「やめよう」と言ってるし、わたしは適当に愛想笑いを浮かべつつ速やかにその場から離れた。


 そして、晩餐会会場の片隅からは、

「ハッハッハッハッハッ」

 と、前回と同じく、パーシュ=カーニス評議員の朗らかな笑い声が響いてきた。

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