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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第2章 ドラゴニアン・ハート城にて
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デフォルトの勧め

 やがて、アース騎士団長は大きく深呼吸とともに、ゴホンとひとつ咳払いをして、

「とにかく、騎士団としては、我々の誇りにかけて、だまし討ちのようなことはすべきでないということで、意見が一致しているのです。ただ、そうは言っても、我々にドラゴニアの危機を救う代案があるわけではなく、最終的には、わが主君の決定には従わざるを得なかったということです。非常に心苦しいのですが……」

 どうやら、アース騎士団長は打つ手に窮して困っている状態のようだ。わたし自ら御曹司の企みに気付き(実際には、そうなるようにアース騎士団長が仕向けて)、わたしから「NO!」と言えば、騎士団にとっては、主君とは対決することなく主君の決定を覆すことができ、その結果、彼らの誇りを守ることができるということだろう。

「お話は分かりましたが、まどろっこしい方法ですね」

「いやあ、お恥ずかしい。本来ならば武人の鑑として…… こんなことはしたくないのですが」

 わたしは苦笑しつつ、「ふぅ」とため息。こんな面倒なことをしなくても、「武人の鑑」なら、もっとスッキリと分かりやすい方法があるだろうに。

「いっそのこと、デフォルトを宣言しちゃったらどうですか? とにかく『ビタ一文払いません』って。マーチャント商会は当然のように軍勢を差し向けると思いますが、そうなれば、騎士団の腕の見せ所でしょう」

 すると、アース騎士団長は、「う~ん」とうつむいて腕を組み、

「マーチャント商会との戦争も辞さずというわけですな。実際、騎士団の中には、そのような強硬論もあります。実は、私の息子、ニコラスもそうなのです。私自身も、いざという時の覚悟はありますが、戦争は最後の手段として行われるべきですからな」

 なんとも煮え切らない騎士団長だ。ただ、「兵は国の大事にして、死生の地、存亡の地なり。察せざるべからず」だから、逡巡するのも無理はない。

 でも、それはそれとして……

 わたしは、ニッコリと愛想笑いを伴ってアース騎士団長を見上げ、

「ところで、先ほど伺った話では、宴会の用意ができ、既にドラゴニア侯も席におつきということですが……」

「ああ、そうだ。失礼いたしました。私としたことが、とんだ御無礼を。どうぞ、こちらへ。皆がお待ちしています」

 騎士団長は、ハッとしたように顔を上げた。


 わたしたちはアース騎士団長の先導で、別次元のような廊下をやや早足に進んだ。再び歩き出してから、騎士団長は口を開こうとしない。今も足を動かしながら「どうしたものか」と思案しているのだろうか。

 やがて、廊下の先に、ドアの隙間から漏れてくる光が見えた。

 アース騎士団長は、何やら微妙な表情を浮かべ、

「あそこが宴会場です。が、しかし……」

 と、顔をしかめた。今度も何か、とんでもないものが待ち受けているのだろうか。ラブホテル、トロピカル熱帯雨林、美少女フィギュアの次は、果たして……

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