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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第18章 宮殿でのルーチン
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今度はメカニックな

 パーシュ=カーニス評議員は(ひととおり話したいことを話し終えたのだろう)、「ハッハッハッハッハッ」と、気持ちよさそうに笑い、

「つまり、ウェルシー伯、そういうわけなのです。あのグローリアス氏、結構怪しいらしいのですが、それはさておき……、どこに行ったのかな?」

 と、遠くを見渡すように、額に手のひらを水平に当てた。ところが、グローリアスの身長の問題もあって、すぐに発見できなかったらしく、評議員はチッと舌打ちして、

「まあ、いいや。どこかで騒ぎが持ち上がれば、『わー』とか『きゃー』とか、声が上がるだろう。というわけで、私はしばらく、適当に宴会場をぶらついています。では、また」

 そして、パーシュ=カーニス評議員は、例によって、「ハッハッハッ」と笑い声を残し、まるで爽やかな春風のように去っていった。

 プチドラは、わたしの腕の中でハテと首をかしげ、

「あの人もいつものことだけど、一体、なんなんだろうね」

「さあ、なんなのかしら。あの人はあの人で、何か思うところでもあるんでしょう。でも、そんな本人にしか分からないこと、いちいち気にしてても、仕方がないわ」


 ちなみに、宴会場の中央からは、例によって、

「くそっ! 誰か、この俺様に挑戦する者は!? 根性のあるヤツ、名乗り出ろ!!!」

 と、ツンドラ侯の叫びとも怒号ともつかない大声が響いてくる。改めて聞いてみると、パーシュ=カーニス評議員の話のせいでそう思えるのかもしれないが、ツンドラ侯には結構フラストレーションがたまってそうな感じもしないではない。

 ということは、すなわち……

「マスター、もうそろそろ、頃合いじゃない?」

 プチドラがブルッと身震いして、わたしを見上げた。わたしも無言でうなずく。もし、フラストレーションが爆発寸前のツンドラ侯に捕まったりしたら、理屈や論理はさておき、ゲテモン屋で恐怖のフルコース(場合によっては恐怖度3倍増しみたいな)に突き合わされ、無理矢理かつ無意味に命をかけさせられることになるだろう。なお、宴会場には、立ち飲み形式でアルコール飲料が用意されているが、さすがの「アルコール大王」も、今日のところは飲もうという気にならないようだ。それだけ、ゲテモンの恐怖が物を言っているということだけど……

「帰りましょう…… いえ、退散と言ったほうがいいかしら」

 わたしは(プチドラを抱きつつ)、ツンドラ侯の目に入らないように細心の注意を払いながら、人陰に隠れ、晩餐会場に入った時とは反対方向に向かって、会場の壁に沿って移動した。そして、係員のいる宴会場の入り口付近までたどりつき、

「とりあえず、ここまで来れば、ひと安心かしら」

 と、ホッとひと息。


 ところが……

「これはこれは、ウェルシー伯、こんなところで、奇遇ですな」

 背後から、最近も聞いたような、どことなくメカニックな声が響いた。

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