いきなり血の雨が
パーシュ=カーニス評議員は、いきなり意味ありげにニヤリとして、
「ところで、ウェルシー伯爵、知っていますか? 実はですね……」
評議員はそう言いながら、しかし、次の瞬間には、なぜだか「ん?」と首をかしげ、
「いや、しかし…… これは……」
と、何か引っかかることがあったのか、突如として「う~ん」と腕を組み、何やら考え始めた。わたしとプチドラは、思わず、「なんなんだ」と顔を見合わせる。
そして、その数秒後、パーシュ=カーニス評議員は、どういう脈絡か知らないけど、唐突に「ハッハッハッハッハ」と快活な笑い声を上げて、
「いやいや、失礼いたしました、ウェルシー伯。実は、なんだか妙なところでお会いたなと、ふと疑問を感じ、ついつい考え込んでしまいました。考えても意味ないのにね、いやぁ、我ながら、馬鹿馬鹿しい時間の浪費をしたものです」
わたしは、思わず(例によってマンガ的慣用表現として)目が点。この人もこの人で、他の人(ツンドラ侯や神がかり行者)とは違った意味で、常識を逸脱している。
「はあ、そうなんですか。それはまた……」
と、わたしとしては、適当に愛想笑いを浮かべる以外なかった。
「えーっと、話はどこまで進みましたっけ? まだ全然? あっ、そう、これは失礼」
パーシュ=カーニス評議員は、独り言か一人漫才のように言った後、ようやく本題だろう、
「実は、面白いことなのです。近々、血の雨が降るかもしれなくなってね。だから、ついつい、出てこなくてもいいところを、ノコノコと出向いてしまったというわけです」
「えっ!? 『血の雨』ですか???」
わたしは、ここで、プチドラと顔を見合わせ、短い時間の間に二回目の(マンガ的慣用表現としての)目が点。いきなり「血の雨」では、穏やかではないことはもちろん、意味不明、わけが分からない。
「さっき、どこの世界から現れたのか、小さな人がいましたよね。その小さい人と、図体だけは……他の部分はサッパリですが、規格外に大きい人が、近々、どつきあいを始めるようなのです」
「どつきあい? なぜ関西風の言い回しかはおくとしても、どつきあって血の雨ですか!? それに、規格外に大きい人って、もしかしたら……、いや、もしかしなくても、やっぱり、あの人?」
会話体ではなかなか要領を得ない話なので、ここは、パーシュ=カーニス評議員の話を手短にまとめてみよう。
結論から言うと、ローレンス・ダン・ランドル・グローリアスとツンドラ侯の間が非常に険悪になっていて、さながら導火線に火の付いた火薬(爆弾)のような危険な状況(ファンタジーの世界でも原始的な火器は存在するのだろう)になっているとのこと。わたしから見て、全然そんな感じはしなかったけど、宮殿内の常識として、そういうことになっているらしい。




