例によって、パーシュ=カーニス評議員
ツンドラ侯の視線に入らないように慎重に「ハッハッハッ」の声のする方に行ってみると、その正体は、果して、パーシュ=カーニス評議員だった。
「いやー、ハッハッハッ……と、いうことは、グローリアス殿も、それなりに苦労されているということですな。そうは見えませんがね、いや、人は見かけによらないか」
「苦しい時に苦しい顔をするのは、誰にでもできることです。ただ、本当に大変な時にこそ、その人の大きさが分かるというものですね」
ちなみに、パーシュ=カーニス評議員の話の相手をしているのは、どういう脈絡か知らないけど、非常に背の低いポッチャリとしたお坊ちゃん、ローレンス・ダン・ランドル・グローリアスだった。
パーシュ=カーニス評議員は、もう一度「ハッハッハッハッハッ」と声を上げ、
「そうですか、なるほど、体はムチャクチャ小さくても、器はとてつもなく大きいと、こういうわけですな。いやはや、これは実に面白い!」
と、自分のギャグ(のつもりだろう、多分……)を気に入ったのか、左手を腹に当て、右手でグローリアスの頭を軽くポンポンと叩きながら、大笑い。
しかし、グローリアスは顔色を変えることなく、
「パーシュ=カーニス評議員に喜んでいただけるとは、光栄の至りですね。私は、他に挨拶を申し上げなければならない人がおりますので、この場はこの程度で失礼させていただきますよ」
「どうぞどうぞ。一向に差し支えありません。ハッハッハッ」
わたしはプチドラと顔を見合わせ、言葉に表すとすれば、「一体、なんなんだ」みたいな。元々、パーシュ=カーニス評議員も、有り体に言えば、ちょっぴり、あっちの世界に逝っちゃってるようなところがあるが、今日のふざけっぷりは、(わたしが言うのもなんだけど)一線を越えているような気がする。
プチドラは、「うんうん」と小さな腕を組み、ひと言、
「パーシュ=カーニス評議員も、いろいろと思うところがあるんだろうね」
でも、これでは説明になっていないのではないか?
その時……
「おや? そこにおられるのは、ウェルシー伯ではありませんか!?」
パーシュ=カーニス評議員が、わたしがいることにようやく気付いたのだろう、(大きくはないが)声を上げた。
わたしは評議員のもとにゆっくりと歩み寄り、
「これはこれは、パーシュ=カーニス評議員、いつもながら実に楽しそうな……」
「そう見えますか、いやー、やっぱり、分かりましたか。分からないようにしてたんだけどなぁ……、でも、分かりますよね。ハッハッハッ」
パーシュ=カーニス評議員は、半ばわたしの言葉を遮るように言った。一体、なんなんだか。ただ、これまでの、ある意味、御都合主義的なパターンから考えれば、もしかしたら、評議員から何か面白い話が聞けそうな気配も……




