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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第18章 宮殿でのルーチン
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最近ではいつものこと

 わたしは宮殿用のパリッとしたドレスに着替えると、プチドラを抱き、不承不承、玄関先に向かった。そして、「ふぅ~」と、これで何度目か忘れたけど、ため息をつきながら、馬車に乗り込む。

 すると、その時、

「あ~、う~…… 確か…… フレー、フレー?」

 と、なぜだかアンジェラが音頭を取って、馬車に向かって応援団風のエールを送っているのが、馬車の窓越しに見えた。

 わたしは思わず、(マンガ的慣用表現にいうところの)目を点にして、

「えっ? アンジェラ?? もしかして、何か悪いものでも食べたの???」

 プチドラも相当に驚いたのか、わたしの膝の上で、あんぐりと大きな口を開けている。

 ちなみに、アンジェラのすぐ傍らには、プロトタイプ1号機が、「ウガガッ、ウガガッ」と、アンジェラに合わせて何やらギクシャクとした単調な動きで踊っている(ように、わたしには見える)。アンジェラが「フレー、フレー」と言うからには、一応、これでも、応援しているつもりなのだろう。

 わたしは、(繰り返しだけど、マンガ的慣用表現として)目を点にしたまま、

「なんだか…… 一体、なんなの???」


 ともあれ、背後にアンジェラとプロトタイプ1号機の応援を受けた馬車は、屋敷を出ると、ゆっくりとした速度で宮殿に向かった。行きたくないのは山々だけど、こればかりは、どうにもならない。

 やがて、馬車は、(特筆すべきこともなく)宮殿に至り、宮殿前での順番待ちに伴うノロノロ運転を経て、宮殿の正面玄関に到着し、最近(ドラゴニアでの戦役が終了し、わたしたちが帝都に戻った後)ではいつものことだが、玄関にいた案内役の係員がわたし(及びプチドラ)を先導する形で、晩餐会会場に向かった。

 そして、その晩餐会会場では、

「みんなぁ! 乗ってるかぁ~い!! 今日も、とことんまで行くぞぉ!!!」

 と、ハイテンションなツンドラ侯が大声を上げているのも、最近ではいつものことで、彼の傍らでニューバーグ男爵が肩身狭そうにしているのも、また、晩餐会会場の入り口で、帝国宰相に対して心にもないお世辞を言いながら(しかし、内心では、「この糞ジジィ」などと激しく罵りつつ)、心付けを手渡すのも、これもまた、最近ではいつものこと。


 ところが、ただ一つ、いつものことではないことがあって、それは……

「ハッハッハッハッハッ」

 と、宴会場の片隅から快活な笑い声が響いてきたこと。ちなみに、この「ハッハッハッ」は、しばらく前にドラゴニアン・ハート城で耳にした下品な高笑いではなく、実に爽やか、かつ、朗らかな響き。

 わたしはプチドラと顔を見合わせ、「ハテ」と首をひねりつつ、うなずき合った。この声の主は、最近は見かけないけど、いつも飄々としてつかみ所のない、あの人……に、決まっている。

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