アンジェラとプロトタイプ1号機
プロトタイプ1号機は、アンジェラの前までゆっくりと歩いていく。アンジェラは、最初、少し脅えたような表情を見せていたものの、すぐにニッコリと笑顔を浮かべ、プロトタイプ1号機を従えて応接室から離れた。
プチドラもパターソンも、何やら不安げな表情を浮かべ、わたしを見つめている。プロトタイプ1号機はそもそも重武装人造人型兵器であり、アンジェラの近くにあのような凶器そのものが存在することは、危険には違いない。でも、具体的な命令がない限り動かないなら、見た感じほど危険なことはないのではないか。アンジェラも気に入っているみたいだし、玩具代わりとして、多少の気晴らしにはなるだろう。
それから、数日が過ぎ……
この日もいつものように、応接室のソファの上でのんびり寝そべっていると、
「それじゃ、プロトタイプ1号機、そこに『おすわり』」
「ウガガッ!」
アンジェラとプロトタイプ1号機は、うまい具合に馴染んできているようだ。この数日、プロトタイプ1号機は勢い余って(心配していたような)事故や事件等々を引き起こしたりすることはなく、言わば、アンジェラの従順なペットのような立ち位置に収まっている。
書類の束を抱えて応接室に入ってきたパターソンは、ほのぼのとした光景に目を細め、
「不思議なものですな。重武装人造人型兵器とアンジェラが、あのように仲良くなるとは思いませんでしたが……」
「精神年齢が……兵器にそんなものがあればだけど、近いのかもしれないわね。これでアンジェラの気が紛れるなら、悪い話じゃないわ。ところで、パターソン、あなたは何用?」
「ええ、そうでした。実は、例によってですが、とある困ったお年寄りから、いつものように、とても困った話がありまして」
わたしは「ふぅ~」と、ため息をつき、
「分かったわ。今日も晩餐会の案内状が来たのね。本当に、いい加減にしてほしいわ」
すると、パターソンは苦笑しつつ、
「お察しいたします。しかし、この件に限っては、私がカトリーナ様の代理で出席するというわけにはいきませんから」
「本当に、『前門の虎、後門の狼』とは、このことだわ」
わたしは、もう一度、大きくため息をついた。ちなみに、「前門の虎、後門の狼」とは、晩餐会とスヴォールの意味。実は、先日来、スヴォールが昼夜別なく(時間的にランダムに)「金を払え」と屋敷を訪れるようになったので、鬱陶しくて仕方がない。パターソン曰く、「毅然とした対応をしている」とのことだけど、ヤツが来るたびに大きな声を上げたり物を激しく打ち付けたりするので、やかましいだけではなく、結構、近所迷惑だったりもする。
「でも……、さしあたっては、晩餐会だっけ……」
わたしは、三たび(今度は更に大きな)ため息をついた。
「分かりました。では、すぐに宮殿までの馬車を用意いたします」
と、パターソン。




