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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第2章 ドラゴニアン・ハート城にて
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「大安室」

 アース騎士団長は、その「大安室」というネームプレートがはめ込まれたドアを開け、

「とりあえず、おくつろぎください……と言いますか、他に言いようがありませんな」

「はい、どうも。でも……、どういう意味かしら?」

 わたしは恐る恐る部屋をのぞき込んだ。しかし、中は真っ暗で、何も見えない。意味的には「大安室」よりも「大暗室」の方が相応しいような気がする。あるいは、タイプミスではないか。

「では、私は他にも仕事がありますので、これにて失礼します」

 アース騎士団長は軽く頭を下げ、疲れたように「ふぅ~」と息をはき出し、その場を離れた。


「さて、どうしようかしら……」

 大安室に入って入り口のドアを閉めると、そこは、まさに、光のない完全な闇の世界。アンジェラは、わたしの傍らにピッタリとくっついている。

 でも、明かりがなくても困らないのが、ファンタジーと石器時代との違い。すぐにプチドラがブツブツと魔法の言葉をつぶやき、パッと部屋の中が明るくなった。部屋の天井付近には、バレーボールくらいの大きさの光の玉が数個、プカプカと浮かんでいる。

 プチドラはエヘンと小さな胸を張り、

「マスター、どう? 明るくなったでしょ」

「そうね。明るくなったわね。でも、光は時として残酷なものよ。見えなければ見なくて済んだものを……」

 部屋の中を見回してみると、いわゆるひとつの美少女フィギュアが四方の壁に沿ってビッシリと並べられていた。御曹司のコレクションなのか、文芸作品としての「大暗室」へのオマージュ(随分とスケールは小さいが)なのかは知らないけど、わたし的には……いや、多分、誰が見ても「悪趣味」と評するだろう。アンジェラは、まるで存在し得ないものを見たかのように、目を白黒させている。

 わたしは(アース騎士団長と同じように)「ふぅ~」とため息をつき、

「まあ、いいか…… それよりも、『契約書』を読まないと……」

 と、騎士団長から受け取った分厚い冊子を広げた。しかし、どのページを見ても、一面、細かい字で埋め尽くされていて、とても、最初のページから最後のページまで通して味読熟読しようという気にはならない。

 こういう場合には、最初からだけど非常手段。わたしはプチドラに分厚い冊子を押しつけ、

「お願いするわ」

 いきなり電話帳のような重いものを持たされたプチドラは、ヨロヨロよろめき、

「マスター、それはちょっと……」

 と、ブツブツと不平を言いながら、しかし、その冊子を床に広げ、ページをめくり始めた。なお、アンジェラは、何が面白いのか、プチドラと一緒にその冊子にじっと見入っている。


 そして、待つこと数十分。わたしは、その間、プチドラの「へぇ~」とか「あらら」とか、独り言を聞きながら、また、無数の美少女フィギュアの萌え上がる視線を浴びながら、うとうとと……

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