想像とは違って
パターソンがおもむろに両手を合わせ、パンパンと合図を送ると、ギィィと何やら意味ありげな音を立て、応接室の入り口のドアが開いた。
そして……
「まぁ、これは!」
わたしは驚きの声を上げた。ガチャガチャという金属音とともに姿を現したのは、甲冑で完全に身を包んだ重武装の騎士のような人物(あるいは物体)だった。身の丈は、2メートル程度あるだろう。腕や足は太く、肩幅も広い、堂々とした体躯。見た目は理想的な戦士といったところだろう。
「重武装人造人型兵器のプロトタイプ1号機です。『持ち帰り、当方で実戦のテストをしたい』とかなんとか、適当に理由をつけて、引き取ってきました」
「そうだったの。手回しがいいわ。さすがね」
「いえ、代金と引き換えに後から受け取りに行くとなると、とてつもなく……、オッ、オエップ! とてもではないですが、身がもちません!!」
なるほど、「後日伺います」では、もう一度、とてつもなく「くさい」ものを味わう羽目になることが、目に見えているということか。賢明な判断だろう。
パターソンは、話しているうちに、そのとてつもなく「くさい」ものの味を思い出したのか、苦しげに頬の筋肉をピクピクと震わせ、
「え~……、スヴォールの説明によれば、『人の言葉は理解できるはずなので、命令すれば、そのとおりに動くはずだ、ウキキキキ……』とのことです。」
最後の「ウキキキキ」はここでは余計だと思うけど、パターソンは、ひととおり説明を終えると、苦しげに「では、私はこれにて」と一礼し、応接室を出た。
「さて……」
わたしは、重武装人造人型兵器のプロトタイプ1号機を、じ~っと(マンガ的表現としては)穴が空くほど見つめた。すると、プロトタイプ1号機は、どういうわけか、驚いたようにビクッと体を震わせ、そのまま「オットット」とバランスを崩し、後ろ向きにバターンと倒れた。
わたしは思わず、目が点。最初にイメージしていたのとは、かなり違うようだけど……、これで本当に大丈夫だろうか。
重武装人造人型兵器のプロトタイプ1号機は、仰向けになってジタバタと手足をばたつかせていたが、しばらくすると、ガチャガチャと金属音を立てて、どうにか起き上がった。そして、(どんな意味があるのか)腕を力強くグルンと回した後に、足を揃えて真っ直ぐに立ち、つまり、「きをつけ」の姿勢。どうやら、ひっくり返ると自力では起き上がれないという、致命的にマンガ的な欠陥はなさそうだが……
わたしは「ふぅ~」とため息をつき、プチドラと顔を見合わせた。最初からこれでは、なんとなくだけど、今後はかなり前途多難のような予感。おそらく、ファンタジーの世界でSF的な重機動メカっぽいものを期待するのは、間違っているのだろう。




