表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第14章 決闘裁判
141/293

決闘裁判

 アース騎士団長は目を閉じ、何やらおもむろに深呼吸すると、

「騎士階級以上で、このように見解が食い違い、確たる証拠によって事実を確認できない場合は、やむを得ない。皆様方、よろしいか?」

 騎士団長は意味ありげに、わたしと、三匹のぶたさん(アート公、ウェストゲート公、サムストック公)の派遣した騎士団の大幹部三人組を見回した。三人組は、なぜだか知らないが厳しい表情で、小さくうなずく。

 プチドラは、ここで、わたしの腕の中から飛び出して、ぴょんとわたしの肩に登り、

「マスター、こうなったら仕方ないね。決闘だよ」

「えっ!?」

 わたしは驚いて、思わすプチドラに顔を向けた。

「決闘って? そんな話、聞いてないけど…… そういうものなの?」

 すると、プチドラも難しい顔をして、こくりとうなずく。

 ちなみに、中世ヨーロッパでは、犯罪行為が明らかであるにもかかわらず、証拠が不十分なため犯人が無罪になった、あるいは無罪となる公算が高いとき、被害者が決闘を申し込む「決闘裁判」なるものが行われていた。その背景には、神が正しい者に味方するという考え方がある。重傷者・老人・女性など戦闘に向かない者が被害者の場合は、代理を立てて争うこともできたようだ。中世ヨーロッパをモデルとしたファンタジーの世界に決闘裁判が存在することは、何ら不思議ではないが、少々唐突感が……


 アース騎士団長は、わたしの顔をしげしげと見つめ、

「ウェルシー伯爵、本当によろしいですか。もっとも、決闘に際しては、自ら武器をふるって闘うのではなく、代理を立てることもできますが……」

 わたしは小さくため息をつき、無言でうなずいた。この期に及んでは、決闘を受けないわけにいかないし、固より、こういう分かりやすい方法があるなら、むしろ望むところでもある。ただ、代理が認められるなら、行きがかりということもあり……

 わたしはニコラスに向き直り、

「ニコラス、あなたに代理を頼みたいけど、いい?」

「えっ、代理ですか!? えーっ、はっ、はい! 喜んで!!」

 ニコラスは、多少、驚いたふうを見せたが(自分が代理を頼まれるとは、思っていなかったのかもしれない)、すぐに、元気いっぱいの声で答えた。なお、この瞬間、アース騎士団長は眉間にしわを寄せ、顔をしかめた。ニコラスの技量に相当な不安を抱いているのだろうか。でも、決闘の現場では、プチドラの魔法で(例えば、ヤツら三人組を麻痺させるみたいな)こっそり支援をするつもりだから、問題はないと思う。


 そして、結論的には、決闘の日時は一週間後の正午、場所は、ドラゴニアン・ハートの町の外れにある城壁を背にした(城門もほど近い)広場、実際に闘うのはニコラスと、ヤツら三人組のうち中肉中背の男(リーダー格なのだろう。今更だけど、名前はルイス・ベン・エドモンド・カートというらしい)と決まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ