いきなりヤンキーのように
わたしはアンジェラと、うんざりとしたような顔を見合わせ、
「また出たわね……」
と、小さくため息。
アンジェラはうなずきながら、既に両手で両耳を押さえている。この場でヤツらを(方法は問わないが)始末できるなら、気分も晴れやかになれるのだろうが……
その時、プチドラが、ふと何かを思いついたように、わたしの腕の中からぴょんと飛び出して、わたしの肩の上に飛び乗り、
「マスター、さっきの話の続きだけど……」
と、わたしの耳元で、ゴニョゴニョゴニョ……
プチドラが言うには、今この場にいるドラゴニアの騎士たちをうまく証人に仕立てれば、ヤツらを無礼討ちにすることも可能というもの。ヤツらが本当にわたしに対して無礼を働かなくても、傍目にそう見える場合には、結果論的にいわゆる「死人に口なし」の原理が妥当するので、真実は別にして無礼討ちが成立し、問題は生じないのではないかとのこと。演技力が問題とのことだけど、プチドラも意外とあくどいことを考えるものだ。
わたしはくるりと後方に向き直り、プチドラを抱いて、「はーっはっはっはっはっ」と大声を上げる三匹のブタさん(アート公、ウェストゲート公、サムストック公)の騎士団の大幹部たちに向かって歩き出した。アンジェラは、急なことでどうしてよいか分からないような顔をしていたが、とりあえず、わたしのすぐ後ろに続いた。
前方には、今は2、30メートルの距離で、ヤツらが大声を上げている。ただ、その距離もすぐに縮まり、10秒もたたないうちに、鉢合わせになるくらいにまで接近した。
わたしは、少々気合いを入れ、チラリとプチドラに目をやり、
「さあ、いくわよ」
ただ、プチドラは、わたしの考えを測りかねたのか、ハテと首をかしげている。それはともかく、いきなりだけど、ここが正念場。
というわけで……
ドン!
マンガ的表現ではあるが、何かと何かが打ち合わされたような音が廊下に響いた。更に、
「きゃあ、お姉様!」
と、アンジェラの悲鳴も廊下に響き渡った。
これは、どういうことかというと、わたしが三匹のブタさんの騎士団の大幹部の一人に対して、ヤンキーの喧嘩を売る作法のごとく、肩をドンとぶつけたということ。ただ、わたしと相手の体格には差があり(当然、騎士である相手の方が、体が大きい)、しかも甲冑を身にまとっているため、その分、質量も大きい。その結果、わたしは反対に弾き飛ばされ、尻餅をついたということ。ただ、それはそれで好都合とも言えるわけで……
「あなたたち、何様のつもり! たかだか騎士の分際で、伯爵様に刃向かう気?」
多少無理気味な感はあるが、わたしは、ここぞとばかりに大声(正確に言い換えれば、金切り声)を上げた。




