破格の地位
アース騎士団長は、さらに、「ダメだ」というようにガックリと肩を落とし、
「わが主君が、アート公、ウェストゲート公、サムストック公の騎士団を受け入れる際、調子に乗りすぎたのか、浮かれすぎたのか、ヤツらに破格の地位を認めてしまったのです」
「なるほど、そういうことが……」
と、わたしはとりあえず苦笑しつつ、でも、それで納得したわけではなく、
「現状の『破格の地位』も、絶対ではないのでしょう。つまり、その『破格の地位』なるものを、ドラゴニア侯の新たな命令により無効化してもらうような……」
すると、アース騎士団は、悔しそうに「チッ」と舌打ちし、
「それも考えたのですがね。ただ、我々は、『正常な判断能力を失っている』といった理由で、主君を地下牢に押し込めたのです。論理的に見て、その判断能力のない人が、有効な命令を下すことは、あり得ないのではないでしょうか」
確かに、理屈としては、アース騎士団長の言うことも、もっともな感じはするが……
「では、騎士団長、結局のところ、彼ら……いや、ヤツら、あのやかましい連中をドラゴニアから追放する方法はないということですか?」
「ええ、尋常な手段としてはね……」
アース騎士団長は、ここで「ふぅ~」と長いため息をついた。
話が終わると、アース騎士団長は、わたし(及びプチドラ込みで)とアンジェラを、これまでも通された、例の「大安室」の前まで案内し、
「毎度のことで申し訳ありません。おそらくは趣味に合わないだろうと思うのですが、これに替わるような部屋がないのです」
「いえ、お構いなく……」
そう言いながら、わたしは眠っているプチドラの頬を突っついたり、つねったり。つまり、これは、大安室の中は真っ暗なはずだから、プチドラに目を覚ましてもらわなければ、どうにもならないということ。
アース騎士団長は、わたしに軽く一礼すると、
「では、私はこれにて、仕事に戻ります。もし何か御用があれば、騎士でも使用人でも捕まえて、何なりと申しつけ下さい」
と、ドラゴニアン・ハート城の廊下を、そそくさと走り去っていった。具体的になんなのかは知らないが、とにかく忙しいのだろう。息子ニコラスの様子に関して、ご隠居様の城でのことを聞かれてもよさそうなものだけど、今の騎士団長には、その余裕もないらしい。
「それにつけても……」
と、わたしはプチドラを見下ろし、ひと言。すなわち、プチドラは、余程深い眠りなのか、突っついても、つねっても、引っ掻いても、また、「エイッ」と前頭部をアイアン・クローで締め上げても、目を覚まさなかった。仕方がないので、わたしは「よいしょ」とプチドラを地面に寝かせ、軽くジャンプ、そして、喉元にプロレス技のいわゆるギロチン・ドロップを食らわす。すると、プチドラは、ようやく「グェッ」と目を覚ました。




