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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第13章 ドラゴニアン・ハート城に戻ってみると
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直談判

 部屋の中でしばらく待っていると、

「静粛に願いたい。これより、先ほどの議論の概要を報告する」

 と、アース騎士団長と思しき声が聞こえた。声のする方向を見てみると、予想どおりのアース騎士団長が、数十人の騎士たちの群れ頭一つ分くらい抜け出して(台を置いて、その上に立っているのだろう)、苦虫をかみ潰したような顔で騎士たちを見つめていた。わたしたちも便乗して騎士団長の話を聞いてみれば、多少は今の状況がつかめるだろう。


 会話体にすると冗長なので、アース騎士団長の話を要約することにしよう。

 話によれば、騎士団長は、新たに受け取った帝国宰相の手紙(「ドラゴニアに対しては、現ドラゴニア侯の領地返上・隠居と、そのことが目に見えて分かる証拠を求めているところである。ところが、今現在、ドラゴニアは、アート公、ウェストゲート公、サムストック公の騎士団を受け入れるなど、戦闘態勢を解かないでいる。そこで、帝都にて、ローレンス・ダン・ランドル・グローリアスを総大将、ツンドラ侯を先鋒軍司令官とする有志連合軍が、ドラゴニアに向けて出発した。もし、連合軍の到着前に、外部から受け入れた騎士団を退去させ、恭順の意を示すなら、前の手紙で述べたように、マーチャント商会への債務関係等も含めた寛大な措置が約束される。帝国政府は、事態が平和的に解決されることを期待する」との内容)の趣旨にしたがい、アート公、ウェストゲート公、サムストック公(つまり、三匹のぶたさん)の騎士団を「今日こそ必ず退去させる」ため、彼らの代表を集め、先ほどまで「理由は言わない、今すぐ出ていけ」と、直接ガツンと直談判を試みていたらしい。

 ところが、その談判の結果は、残念なことに……、ひと言で言えば「けんもほろろ」だったとのこと。彼らは、「帝国宰相だの諸侯有志連合軍だのいっても、皇帝陛下の御命令ではない。実は、自分たちの主君であるアート公、ウェストゲート公、サムストック公からも帰還命令を受けているところであるが、我々が助っ人として現にここにいる以上、騎士の面目にかけて、こういう不当な指示に従うことはできない。諸侯有志連合軍が来るなら来い、我々が粉砕して見せる」と、わけの分からないことを言っていたとか。

 話を聞きながら、わたしは「ふぅ」と、思わずため息。あのやかましい三人組が、これほど不可解な連中だったとは、まったくの想定外。

 また、ついでにもう一つ、ツンドラ侯が総大将とは別に先鋒軍司令官ということは……、帝都で何かひと悶着あったかもしれない。


 アース騎士団長の話がひととおり終わると、集まった(群がった)騎士たちから、口々に怒り・不平・不満・非難等々の声が上がった。でも、ここでアース騎士団長に文句を言っても解決する問題ではなく、それは騎士たちにも分かっているのだろう、次第にそういった声は小さくなっていった。

 騎士団長は、騎士たちが静かになった頃合いで、「ふぅ~」と大きく息を吐き出し、

「天地神明に誓おう、この問題には必ず対処する。そういうことで、御理解願いたい」

 具体的な対策案を持ち合わせているわけではないだろうが、騎士団長としては、こうして収める以外に手がないのだろう。

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