前に来た部屋
騎士たちは、無秩序な集団となりつつあった。アンジェラは、不安げな眼差しをわたしに向けている。今すぐこの場を離れるべきか、もう少し様子を見るべきか……、そんなことを思案していると、
「お姉様、あれを!」
アンジェラが、(具体的に誰ということはなく)騎士たちを指さして言った。見ると、騎士たちは、まるで羊か牛の群れのごとく密集した状態になって、廊下の更に先(あるいは奥)に向かって押し合いながら、わたしたちから遠ざかっていく。
「どうしたのかしら? 今になって移動を始めたの??」
わたしは「う~ん」と首をかしげつつ、
「なんだかよく分からないけど、彼らについて行ってみましょう」
「えっ!? 大丈夫なのですか?」
大丈夫かどうかは分からないが、ここは、そうする以外にないと思う。騎士たちを見てみると、皆一様に不機嫌な顔つきではあるものの、先ほどまで飛び交っていた怒号に近い大声は聞こえてこない。多少、気が落ち着いてきているのではないか。
わたしは右手でアンジェラの手を引き(プチドラは左手に)、多少の距離を取って、移動する騎士たちの後に続いた。
騎士たちは、ドラゴニアン・ハート城の廊下をゆっくりと(より精確に言えば、ノロノロと)、長い行列になって移動していった。先頭は、アース騎士団長に違いない。
そして、城内を歩くこと十分弱、騎士たちはぞろぞろと、列を大きく崩すことなく、城内のとある一室に吸い込まれるように入っていった。わたしとアンジェラも、言うなれば当然のように、騎士たちの最後尾にくっついて、その部屋に滑り込む。
部屋に入ると、アンジェラは、わたしの背後に身を隠すようにして、
「勝手についてきてしまいましたが、本当に、これでいいのでしょうか?」
「まあ、確かに、泥棒さんみたいな感じもするけど…… いいんじゃない」
と、わたしは思わず苦笑い。ファンタジーの世界でもあり、多少のことは、好まれないとしても許容されるのではないか。
部屋の中をよく見てみると、スペースとしてはかなりのものがあった。廊下に大勢いた騎士たちを全員収容しつつ、もう少し余裕がありそうな状態。
アンジェラは、顔を右に左に、あるいは上や下に向けて、壁、床、天井等々あちこちに目をやり、
「この部屋、前に来たことがありますね。確か、宴会場だったと思いますが……」
「えっ、そう? ふ~ん…… そうね、確かに……」
言われてみれば、最初にわたしたちがこの城に来たとき、歓迎の宴を催すとかで案内されたのが、この部屋だったような気がする。その時は、まずいばかりではなく命に関わる料理が出てきたり、プチドラがメチルアルコール入りの粗悪品ワインでオエッとなってたり、翌日には、マーチャント商会の使者を斬り殺したり、いろいろと盛り沢山だったような……




