魔法の隠し扉
プチドラの案内に従って城の廊下を進み、やがて地下への階段を降りて、レンガ造りで暗くてかび臭い地下道を歩くこと十数分、
「ここだよ。この先が、秘密のワイン倉庫なんだ」
プチドラが得意げに言った。
「この先?」
わたしは「はて」……、いや、半ば「げっ」というリアクションを伴い、目を大きく見開いた。すなわち、目の前及び右手・左手にはレンガの壁が立ちはだかり、行く手を阻んでおり、つまり、ここは袋小路。また、わたしばかりではなく、アンジェラも、ニコラスと仲間の騎士たちも、一様に「一体、なんなんだ」という表情で、互いに顔を見合わせている(なお、地下道に進入する時から、プチドラの魔法による光の玉が周囲を照らしているので、明かりには困らない)。
「まあ、見てて。すぐに道ができるから」
プチドラはそう言うと、小さい両腕をぐるんぐるんと回しつつ、ブツブツと何やら魔法の言葉を唱えた。すると、あ~ら、不思議(ただ、ファンタジーの世界観的としては、ありきたりかもしれないが)、たちまち、わたしの目の前の壁に(これ見よがしに)光輝く黄金の扉が浮かび上がり、音もなくゆっくりと開いていった。
プチドラは、右手で小さくVサインを作りながら、
「さあ、この先だよ。どんどん行こう!」
光り輝く黄金の扉の先にも、やはり、先ほどと同じように地下道が続いていた。わたしたちはプチドラの示す方向に従って、地下道を進み、更に下層へと続く階段を降り、その先の地下道を右に行ったり左に行ったり……
しばらくすると、わたしたちは、右側も左側も目の前も壁という(先ほどと同じようなシチュエーションの)袋小路に到達し、
「よし、ついたよ! ようやくワイン!! 最高級のドラゴニアワインだ!!!」
と、プチドラは、小さな両手でガッツポーズを作り、わたしの腕からピョンと、勢いよく飛び出した。そして、目の前の壁に顔を近づけ、
「え~っと、確か、この辺りだったかな……」
と、独り言を言いながら、壁と床の境目付近を凝視しつつ何やら意味ありげな行動。
わたしは、プチドラの背後から身をかがめ、
「何をしているの? 面白いものでもあるの??」
「うん、ちょっと、捜しもの…… あっ、あった!」
プチドラは、目の前の壁で、床から3センチ程度の高さにある、小さな突起物を示した。見た感じ、機械的な仕掛けが作動するスイッチ、あるいはボタンのようだ。
「このところを、ポチッと押すと……」
そう言いながら、プチドラは、その突起物を壁面に押し込む。すると、あ~ら、不思議、今度は、目の前の壁全体がゆっくりと上方に(つまり、天井に向けて)、シャッターのように持ち上がっていくではあ~りませんか。そして、その先には……




