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ザ☆旅行記ⅩⅠ ドラゴニア戦記  作者: 小宮登志子
第2章 ドラゴニアン・ハート城にて
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アース騎士団長

 完全武装の戦士たちは武器を構え、わたしと隻眼の黒龍の周囲を取り囲んだ。ちょっぴり腰が引けているような気もしないではないが、(一般論としては)ものすごく恐ろしいドラゴンを相手に逃げ出さないのだから、それなりにプライドや職業倫理のようなものがあるのだろう。

 戦士たちのうちのひとりが(この集団の隊長だろうか)、2、3歩、前に歩み出て、大きな声で叫ぶ。

「おまえたち、ドラゴニアン・ハート城に、一体、なんの用だ!?」

 顔面が兜で覆われているので、どんな顔をしているのかは分からないが、声からすると、結構、若者っぽい感じ。ただ、「なんの用」と言われても、わたしとしては御曹司に呼ばれたから来ただけで、わたしの側に来たい理由などないのだが……

 わたしは「ふぅ」と小さく息を吐き出し、

「面倒だから、とりあえず『正当防衛』ということで、殲滅しちゃったりして……」

 すると、アンジェラはギョッとした表情で振り向き、わたしを見上げた。のみならず、隻眼の黒龍も、大きな頭をブルンと振り、

「いくらなんでも、それはワインが許さない…… じゃなくて、ここで話をこじらせると、ドラゴニア産のワインにありつけなくなるかもしれないよ」

 隻眼の黒龍にとっては、とにもかくにもワインが最優先のようだ。


 その時、ラブホテルのような城の中から、

「待て、ニコラス!」

 という声とともに、立派な甲冑を身にまとった男が小走りに駆けてきた(ただし、兜はかぶっていない)。見たところ、中年よりも上だけど初老の域には達していない感じ。

「父上、怪しい者が侵入してまいりました。我々は、ドラゴニア騎士団の務めとして……」

「怪しい者ではない。おまえには話していなかったかもしれないが、この方たちの素性は知れている」

 その「父上」と呼ばれた男は、隻眼の黒龍を横目で見ながら、

「ニコラスよ、おまえもドラゴニア騎士団の一員なら、隻眼の黒龍のことは、知っていよう」

「えっ、隻眼の黒龍!? そっ、そんなっ!!!」

 ニコラスと呼ばれた男は、ビックリ仰天。武器を取り落とし、泡を食ったように何歩か後退すると、バランスを崩して尻餅をついた。

 男は、「やれやれ」とばかりに長く嘆息し、

「息子がとんだご無礼を…… ひらに、お許し頂きたい。申し遅れましたが、私はドラゴニア騎士団長、ロバート・バーナード・ジョン・アース、そちらにひっくり返っているのが、不肖、息子のニコラスです」

 アース騎士団長と名乗った男は、ペコリと頭を下げた。

「そして……」

 アース騎士団長は「あぁ」と嘆息するように額に手を当て、ラブホテルのような城に顔を向けると、

「あそこにいるのが、わが主君、ドラゴニア侯ですが……」

 城の窓からは、御曹司が、愛人であろう女性とともに、青白い顔を突き出していた。

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