中庭では
わたし(及びプチドラ込みで)とアンジェラは、騎士たちの後を追った。騎士たちは、重い甲冑を身にまとっているためか、それほど速くはないスピードで、廊下を駆けていく。女性・子供の足でも、すぐに追いつけるというわけではないが、反対に離されることもなかった。
やがて、騎士たちは城内の廊下を抜け、大きく開けた場所に出た。わたしたちも、接近しすぎないように注意をしながら、騎士たちに続く。
「お姉様、騎士さんたちは、お城の中庭に出たようです」
アンジェラは、走りながらわたしを見上げた。さすがと言おうか、わたしには、自分が今どこにいるのか皆目見当もつかなかったのに……
ともあれ、中庭というと、わたしたちがドラゴニアン・ハート城に到着した際の着陸地点だったところ。わたしたちは、城からの中庭に出るところで一旦停止し、城内から身を乗り出すようにして、中庭内を見回した。すると、その中庭の中央付近にて……
「父上! いや、騎士団長!! 我々は、正当な主張をしているのです!!!」
「いずれにせよ、その話は、終わった話のはずだ。今更、何を言う!」
若い(まだ半分は子供のような)男の声と、中年以上っぽい男の声が響く。いきなり、あまり穏やかではなさそうな展開。よく見ると、中庭には、甲冑の上にそろいの緋色のマントを身にまとった十数名の騎士の集団と、その集団を取り囲むようにして、甲冑を身につけた(緋色のマントとは別の)十数名の騎士の集団が対峙していた(両集団とも兜をかぶっているので、顔はよく分からない)。
アンジェラは、突然のことにビクンと体を震わせ、
「お姉様、これは、一体?」
「なんでしょうね。騎士と騎士がにらみ合ってるのは分かるけど、それ以上のことは……」
わたしは、「はて」と首をひねった。プチドラも、よく分からないのだろう、「う~ん」と腕を組んでいる。
「今や、ウェストゲート公、アート公及びサムストック公の騎士団は、ドラゴニアにとって、侵略者も同然。どうして彼らを討伐してはいけないのか!」
兜をかぶっているので顔が見えないが、声の室や調子等々から判断すると、問答をしているのは、アース騎士団長と息子のニコラスだろうか。
「だから、その話は、前にも言ったように、ドラゴニアの騎士の道に反するということだ。ニコラスよ、おまえもドラゴニアの騎士団の一員なら分かるだろう」
あっさりと「ニコラス」という固有名詞が飛び出したが、すぐ前の「父上」とも合わせて考えれば、わたしの推測が当たっていたことは間違いなさそうだ。
「騎士の道は分かっている。我々は、その騎士の道を正しく進むために、ドラゴニアの明日のために、正当な要求を申し上げているのだ!」
「だから、正しいことは分かる。しかし、おまえたちは大義と小義を混同している。一時の感情にとらわれて、血気にはやってはいかん」
「正しいことは、実現されてなければ、本当に正しいことにはならないではないか!」
こんな具合に……、この問答、なかなか終わりそうにない。




