翌朝
やがて日が暮れ、月が出て、夜を迎え、夕食を食べ、ベッドに入り、夜が更け、要するに、その日の一日が終わり……、そして、数時間を経て、朝、当然のごとく、日は再び昇り……
わたしはさほど居心地のよくないベッドに横たわり、レム睡眠のボンヤリとした意識の中……
「お姉様、ねえ、お姉様、朝になりましたよ」
不意に、女の子の声が耳に入ってきた。今現在のシチュエーションに鑑みれば、声の主はアンジェラ以外には考えられないところだけど、それはそれとして……
「マスター、朝だよ~ 起きても特にすることはないけど、とにかく朝だよ~」
これは、おそらく(いや、十中八九)プチドラの声だろう。
「う~ん、ダメだね」
「そうですね。どうしましょう。アース騎士団長が、朝食の用意ができたと……」
「じゃあ、こうしよう。せーの!」
グェッ!!!
ちなみに、その「グェッ!!!」とは、わたしの悲鳴。つまり、何が起こったのか分からないが、突如として腹部に強い衝撃を感じ、思わず声を上げたということ。
わたしは酔っ払いのように頭をクラクラとさせ、おなかを押さえながら体を起こし、
「なん……なの? なんの脈絡もなく隕石かしら…… でも、まさか……ね」
「マスター、朝だよ。自分の屋敷じゃないんだから、それなりに行儀よくしないと」
見ると、ベッドの上(より具体的に言えば、わたしの足の上)では、どういうわけか、プチドラがラジオ体操のように腕をグルグルと回している。ここで合理的に考えることができるなら、今の衝撃は、プチドラによるダイビングヘッドバッドと推論できるだろう。
しかし、わたしは、半ば夢うつつの状態で、
「朝……になったの、そう…… でも……」
わたしはもう一度、体を後ろに倒し、いわゆる二度寝をしようとした。ところが……
「お姉様、いけません。アース騎士団長に悪いですよ」
と、アンジェラが後方から、(倒れかかろうとする)わたしの背中を自らの両腕で支えるようにして、わたしの二度寝の企てを妨げたため、
「えっ? 仕方ない……か…… ああ……」
結局、この日はこれ以上の抵抗の手段がなく、ベッドから出るよりなかった。
なお、その時までに起こった出来事を整理すると、まずは、アンジェラがこの部屋で一番早く目を覚まして身支度を調え、わたしやプチドラが起きるのを待っていたが、やがて手持ちぶさたになって、大安室の四方の壁に並べられたフィギュアを手にとって観察を始めると、しばらくしてアース騎士団長が部屋を訪れ、朝食の用意ができた旨を告げたため、アンジェラは先に、子犬のように丸くなって眠っていたプチドラを起こし、その次に、プチドラと共同で、眠りが浅く夢うつつの状態になっていたわたしの意識を、半ば暴力的手段によって覚醒させたと、こういうこと。




