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Happy Valentine !

作者: 遊月奈喩多

こんばんは、遊月奈喩多です!

バレンタインデー到来です。私が最後にチョコをもらったのは、高校のときのバラまき(言い方悪いな)でしたね~。個別でもらったのは中学時代の友と義理中間系チョコ(だよな?)でしたっけ。


と、そんな懐かしい思い出に思いを馳せつつ、短編を書かせていただきました。

あらすじにもあったように、今作は幸せな女の子のお話です。

せっかくのバレンタインデーですから、たまにはね?


本編スタートです!

 窓の外から、眩しい日光が差し込んでくる。まだ眠っていたいのに、無理やり目をこじ開けるみたいな明るさに少しだけうんざりした気分になりながら、わたしはベッドの上で体を起こした。

 ……やっぱり。

 枕元に置いておいた携帯で時間を見ると、目覚ましをセットしておいた時間より数分だけ早い。

 あーあ。こんな時間に起きちゃったら寝直したりもできないよ……。

 自然と漏れるため息に促されるように、わたしの気分もちょっと沈む。

 とりあえず朝ごはん食べて学校行こ。

 まだ眠い目をこすりながら、わたしは部屋のドアを開けて居間に向かう。はぁ、また今日もつまんない日常の始まりだ。

 ……ん?

 今日、は……。

 ちょっと冷たい廊下の空気なんて気にするのも時間が惜しくて、わたしは慌ててカレンダーを確認しに居間に向かう。

 そして、日付を確認すると、2月14日。

 土日の休みが明けて2日目……つまり火曜日。いつもなら1週間の中でも、月曜日のように休み明け特有の無理やりな元気オーラにくるまっていられるわけでも、水曜日以降のように週末の休みが足音を届けてくれる期待感があるわけでもない、きっと1番ダレる曜日。

 あー、思い返したら授業も……。

 1限から「催眠先生」の古文で、そこで眠くなったままの数学B(よくわからなくて眠くなる)、世界史(何で行きもしない外国の歴史を勉強しなくちゃいけないの?)という、何ともやる気を削がれるラインナップ。

 まったく、たまには音楽だけの日とかあればいいのに。

 唯一救いがあるとしたら、昼休み明けの眠い時間帯に現国があることかな。

 ちょうど今やってるところが、わたしが生まれるちょっと前くらいにベストセラーになった『心境調教★即興ナショナリズム』という小説で、なんというか、シリアスなのかギャグなのかどことなくよくわからないところがなんとなく面白くて好きだったりする。

 現国の先生から言わせると人の心理の複雑さだの何だの、って意外と理詰めな話らしいけど、まぁ面白いので、それやってる間は楽しく受けてられそうかな~……というのが普段の火曜日だ。

 だけど、今日はただの火曜日じゃない。

 2月14日は、1年に1度のバレンタインデーだ!

 元々は違う意味があるとかそんなことを誰かから聞いた気がするけど、わたしにとってはただの待ちに待った日!

 日曜日のうちに作っておいたチョコクッキーの数を数える。

 1,2,3,4,…………よし、ちゃんと全員分作ってある! クラスの男子と、部活の子と友達と……うん。周りからどう冷やかされるかわからないから、本命は誰にもわからないように巧みなカモフラージュ!……なんていうのは、わたしたちの中では常識だ。

 といっても、大体の子はもう本命の相手とそれぞれ機会を作って会えるんだけどね。だから、冷やかすようなオーディエンスがいない環境で、改めて直接手渡せるわけである。

 一緒に帰ったり、ちょっと呼び出ししてみたり。こういう日は男子もけっこう期待して待ちかまえてるからわりと状況も作りやすい!というのは、親友の莉緒りおから耳タコなくらい聞かされたことだ。まぁ、わたしには必要のないことなんだけど!

「~♪」

 思わず鼻唄が出る。

 必要ない……というのは誰も好きな人がいないとかいうわけじゃなくて、わざわざ隠すような相手でもないから。

 それでも義理を渡しておくのは、たぶんこのバレンタインという日を楽しみたいから。それは別に悪いことじゃないでしょ?

 少し曇った空の下、着替えを済ませたわたしはローファーを履いて外へ出た。


「たっだいま~!!」

 あー、待ち遠しかった!

 学校に持って行った義理クッキーを午前中に全部渡し終わって、もう下校時間が待ち遠しくなりながら時間が過ごしていた。もう現国の即興ナショナリズムもわたしの脳内をびゅんびゅん通り過ぎていく。あぁ、さっさと帰りたいなぁ。もうそればっかりだったよ。

 だって、わたしの本命は学校にいるわけじゃないし。

 大学生の栽松うえまつ 翔多しょうたくん。それが、わたしの彼氏だ。

 出会ったのはクリスマスに莉緒と一緒に行った合コン。

 会った瞬間もう一目惚れで、それからずっと付いて回ってやっと付き合えることになったのがついこの間。今日もわたしの学校が終わったら会う約束をしていたのだ。それなのに、だいぶ遅くなっちゃったなぁ……。

 まったく、ただでさえ授業が長くて早く帰れないのに、最近毎日のように帰りのホームルームで「帰り道に気をつけましょう」とか「暗くなる前に帰りましょう」とか、何か小学生にいうようなことを繰り返してる。

 あー、いつもならああいう長話のときには誰かしら話の腰を折って終わらせてくれるのになんかみんな揃ってマジメに聞いてるしさ~。

 だからそういう気分で、辺りに気をつけて帰ってきても……。

「結局なんにも起こらないじゃんね~」

 だからそんな独り言を言いたくなっても、全然不思議じゃないわけで。

 カバンをベッドに置いて、とりあえずもらった友チョコを出しておく。机の上に並べて、ん、こうした方が見栄えいいか。で、並べて……、写真撮って……よし、アップ完了♪

 とりあえず義理は果たしたよ、マイフレンズ!

 今日の本番はむしろこれからだ。

 部屋に置いたものを片付けるのなんて後でもできるし、とりあえず今は本命の彼だ! 部屋を出て、冷蔵庫の中で出番を待っているチョコケーキを出す。うん、やっぱり自分で作ったのより見栄えいいかも。

 最近は手作りよりも確実においしいお店のケーキの方が好きって人もいるしね~。

 わたしそこまで器用じゃないし。

 近所のケーキ屋さんでバレンタイン限定ということで販売されている逸品! ちょっとほろ苦めな味が好きな彼にもぴったりなコーヒージュレ入りということで、もう速攻決めちゃいました~、にゅふふ。食べたらどんな顔をしてくれるか、楽しみだな~!

「待っててね~、翔多くん♪」

 すぐ届けるからね~!


 わたしが翔多くんの部屋に行くと、彼はわたしのことを待ちかまえていたみたいに見つめてくる。

「えへへ、遅くなっちゃってごめんね。ハッピーバレンタイン!」

「大丈夫大丈夫。気にしなくていいから」

 翔多くんは、わたしがちょっと遅くなっても、大体そう言ってくれる。優しいなぁ。

 あれ、今日つまんなかったのかな。なんか笑顔がちょっと寂しげ? 大丈夫だよ、遅くなって戻らなくちゃいけなくなるまではわたしが一緒にいてあげるから!

 わたしは彼の前まで歩いて行って、ちょっともったいぶってみせることにした。

 何でも、演出が大事ってね!

「翔多くん、今日は何の日でしょう!」

 後ろ手を組んで、翔多くんからチョコケーキの入った箱が見えない状態で立ってみせる。あー、後ろ覗き込むのは反則で~す!

「……? っと、何だっけ。建国記念の日?」

 本当にわからなさそうに首を傾げる翔多くん。あーあ、これだから長期休暇中の大学生は。日にちの感覚もなくなるような自堕落っぷりなのかな? 「ふっふっふー」ともうちょっともったいつけて笑う。……あれ、ほんとにわかんなさそう? もう、テレビでも連日やってるのにねー。

「今日は、バレンタインデーでーっす☆」

 じゃーん、と言いながら箱を翔多くんの前に出す。

 すると、翔多くんの表情が一変した。

「そ、それっ、それチョコか? チョコ……!?」

 驚いたような、喜んでいるような……、ん? 何て言えばいいのかな、この顔。とにかく、もうすごい顔だ。別に嫌がってるわけじゃないみたいだけど、すごい顔!

「え、ど、どうしたの?」

 なんて言う暇もないくらいの速さで翔多くんはわたしの手から箱を取って、いそいそと箱を開け始めている。おっ、そんなに楽しみにしててくれたのかな~? ニヤニヤしてみているわたしの目の前で、何とか箱を開け終えた翔多くんが小さなチョコケーキを、時々むせたりしながら食べている。

 うんうん、大学生の人って何だか年下の前では余裕ぶるタイプが多いんだよね。だから、翔多くんみたいに素直な反応で接してくれるのって珍しいし、何だかかわいらしい。

 がつがつ、ぺちゃぺちゃ、けほけほ。

 色んな音を立てながら、おいしそうに翔多くんはチョコケーキを食べてくれる。

「おいしい?」

 嬉しくなって尋ねると、ぴくっ、としてわたしを見る。それからゆっくりと口元に笑みを浮かべて、「うん、おいしい。すっげぇおいしい……!」と何か涙まで流して答えてくれる。そんなに気に入ってもらえたんだったら、やっぱりお店に行ってみてよかった。教えてくれた莉緒にはほんと感謝だな~!

 ……うん、すっごい食べてる。

 ふふ、嬉しいなぁ。

 やっぱり、こういうのを幸せって言うんだろうなぁ。

「もっとほしい?」

 幸せな気持ちで笑っているわたしの目の前でチョコケーキを食べ終えた翔多くんが、器用に箱の隅のチョコまで舐めとっている。よっぽどおいしかったんだね。

 翔多くんは首が取れそうなくらいに頷いてくれた。

 おぉ……っ! ちょっと感動。

「わたし、料理そんなにうまくないけど、それでもいいの?」

「うん……!」

 あら、すっごい素直。

 最初はそうでもないというか、そっけないというか、何か話しかけてても寂しくなるようなことだってあったのに、ほんとに変わったんだね。これも愛の力かな?

 こんな素直に来られると、何か意地悪したくなるなぁ♪

「じゃあ、ちゅーしてくれたらいいよ~?」

 そう言った次の瞬間には、もう翔多くんの唇が襲いかかってきていた。……そう、まさに襲いかかってきた感じ。そのままわたしの唇を食べてしまいそうなほどのキスだった。

「~~~」

 息、苦しい。

 準備してなかったから、息できない~!

「――――――」

 翔多くんが、我に返ったように唇を離す。ぷはっ。

 大きく息を吸うわたしから目を逸らして、翔多くんは「わ、わるい……」と力なく呟いた。別にそんなに気にしなくてもいいのに。わたしはちょっとビックリしただけなんだけどなぁ……♪ 笑いそうになっているわたしの前で、翔多くんは早速床に垂れた涎に舌を伸ばしている。うわ、喉も乾いてるんだね!

「待ってて、すぐに作るから!」

 ちょっと待っててね、もう1回言って、わたしは台所に向かった。


「おいしい?」

 わたしが訊いても、今度はもうそれが耳に入らないみたいに夢中でご飯を食べている。

 よっぽどお腹を空かせてたみたいだ。う~ん、もっとこまめに料理作りに来てあげよっかな~。うん、それいいかも!

 なんていい思いつきだろう。えっへん!

 ――なんて自画自賛していたら、いきなり携帯がブルブル震える。翔多くんがビクッと体を震わせて、そのままわたしの手から携帯を取り上げようとした! うわっ、危ないよ~?

「大丈夫だよ、翔多くん。ちょっと待ってて……あ、ほら友達の莉緒からだよ。男子とかじゃないからさ」

 携帯が鳴るとすぐに浮気を疑ってしまうくらいに愛されてるとかね。うん、ラブラブなのも考え物だね! でも大丈夫だよ? わたしは翔多くん一筋だから☆

 翔多くんからちょっとだけ距離をとって、通話ボタンを押す。

「あ、もしもし~。莉緒どうしたの?」

『あー、ゆり? あのさ、今からゆりんちで女子会やりたいんだけど。サエが振られちゃったみたいでさぁ……。みんなで慰め会しようかって』

「うわ、急だね~。今日は親いないからいいけど……」

『いや~、今日ってどこもかしこもリア充の巣窟だからさ。サエかわいそうじゃない? で、学校から1番近いゆりんちに行きたいんだけど……。ダメかな?』

『お~い、ゆり! もう来ちゃってるからね~!? ほれ、ピンポンピンポン』

 うっわ……、いつも静かなサエが電話口にハイテンションだ……。よっぽどショックだったのかな。あらら~とか思っていると玄関のインターホンが何回も鳴り始めた。あー、はいはい。今行くから。まったく、今年は賑やかなバレンタインデーになりそうな予感。

「じゃあ翔多くん。お部屋暗くなっちゃうけど、ちょっと待っててね?」

「……ゆ、ゆり!?」


 食べ物と飲み物を翔多くんの目の前に置いておいてからわたしは部屋を出て、しっかりと鍵を閉めた。

 前みたく親に見つかりそうになったら大変だからね!


「はーい!」

 台所に上がって、わたしは急いで玄関に向かって行った。

 それからはもう、ずっとサエの慰め会になったことなんて言うまでもない。

 あー、今日はほんとに幸せな日だ。

 友達とこうやっておしゃべりしてるのも最高だし、2人が帰ったら今度は翔多くんとバレンタインデーを満喫できる。久々に親が遅い日でよかった~。

 何か今のわたし、まさにリア充!?

「ちょ、ゆり~! 聞いてる~!? だから今度さぁ、…………」

「サエ飲みすぎ~。明日も学校なんだから、バレたらやばいよ?」

 こんな感じ。

 幸せって、そんな特別なこととかじゃなくて、こうやって好きな人たちと好きなようにしていられることなのかも知れないね。


 こうして今年の冬も、わたしは幸せな気持ちで過ごせているのでした。

 ハッピーバレンタイン!

ということで、『Happy Valentine!』でした!

いかがだったでしょうか?


「何かさぁ、『色々あって』じゃなくて最初から最後までただ幸せな話ってないのかね」


そんな知人の言葉が、このお話を生み出しました。色々ご意見がある方はその知人におねがいします(笑)

ではでは、短くなりましたが、あとがきは以上とさせていただきます。

読者の皆様、遊月の分までバレンタインを満喫してください! 勝手に応援していますっ///


ではではっ!

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