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43 訓練の成果


 現在、地下二階へ下りる階段の前まで来ております。

 地下一階では、アイテムが十個手に入りました。


「まさか、一階でこんなにアイテムが手に入るとは思わなかったな」


 カインさんが感慨深げに言われている横で、ベイルさんはすっかり言葉が少なくなり、何か考えておられます。


 ドラゴンさんの石像は一個だけで、後は岩のようなものの中にアイテムが入っていました。

 岩の形は全部違う形になっていましたが、風景になじみ切れていない感じで、慣れるとすぐに分かります。


「地下一階では『体力回復薬』が五個、『魔力回復薬』が四個、『鋼のナイフ』が一個でした」


 アイテムの内訳を報告し、ついでに地図について分かったことも伝えることにします。


「地下一階の道は、初級ダンジョンと同じでしたね」


 事前情報では、中級ダンジョンの地下一階から十階までは、初級ダンジョンとほぼ同じということでした。

 今回は比較するため、初級ダンジョンの地図も持ってきています。


 私が作った地図で比べたら、アイテムの場所の違いがある程度でした。

 初級ダンジョンの地図を二倍にしたら、中級ダンジョンの地図になるといった感じです。


 なんというか……魔物のサイズが大きくなったから、ダンジョンのサイズもそれに合わせただけなのでは?

 ……ん? ひょっとして逆?

 中級ダンジョンが基本なのかな?


「それにしても、特別な道具を使わずに、よくここまで正確な地図が作れるな」


 ベイルさんが地図を見ながら聞いてこられました。

 ふっふっふ……そこを聞きますか、ベイルさん。


「ど、どうした? 聞かないほうが良かったか?」


 おやおや、ベイルさんが何やらうろたえておられますね。


「いえいえ、別に秘密でも何でもありませんから、大丈夫です」


 ええ、ぜひ聞いて下さい!


「私の身長がこれ以上伸びなくなった時、父がいきなり訓練を始めたのです」

「訓練?」


 おや、カインさんも興味がおありのようですね。


「そうです。ひたすら歩き続けました……」

「何の訓練だ?」

「ひたすら歩く訓練? 地図と何の関係があるんだ?」


 カインさんは訓練内容が知りたくて、ベイルさんは地図作りについて聞きたいといった感じですかね。


「父と一緒に、ひたすら同じ歩幅で歩き続けるのです……」


 その訓練の日々を思い出し、思わず遠くを見つめてしまいました。


「なぜそんなことを?」

「なるほど……」


 カインさんはまだ分からないようですが、どうやらベイルさんは何が言いたいか分かったようです。


「何時でも、何処でも、どんな時でも、常に同じ歩幅で歩けるようにすることで、距離が分かるようになるのです」

「それは……商売に何か関係あるのか?」


 カインさん、そこで商売との関係を聞きますか!

 聞きたいですか? では、言っちゃいますよ!


「まぁーーったく関係ありませんでした!」

「は?」

「まあ、そうだろうな」


 お二人の反応が違っていて面白いですね。

 ベイルさんは聞かなくても分かっておられたようです。


「私も、何か商売に関係があり、父から後で説明があるのかと頑張っていたのですが……」

「そうか……」

「まあ、そうだろうな」


 先程から、ベイルさんは何か納得されていますが、父のことを何か知っているのでしょうか?


「ベイルさんは父を知っているのですか?」

「え? ああ、少しだけ噂でな。戦える商人として知っている。確か、若い頃はダンジョンでも戦っていたとか」


 なんだか取り繕っておられるようにも感じますが……まあ、いいか。

 確かに、父はある一部の方々にとっては有名人かもしれませんし。


「よくご存じで。ダンジョンのことは父から聞いたことがありました。でも、その訓練をしていたのは、私が今の商売をしようと思うより前です!」

「つまり……」

「そう、父の趣味に付き合わされていただけです!」


 カインさん、いい合いの手を入れてくれますね。


「ま、まあ、こうして役に立っているからよかったんじゃないか?」


 ベイルさん、そんな目を合わせずに言われてもフォローになりませんよ!


 散歩とは違うのです!

 ひたすら必死に、真っ直ぐに、脇目も振らずに歩き続けるのです!

 意味も、目的地も分からずに!


 ……いけない、落ち着かなくては。


「そうですね。今になって役立つとは……あの日々が報われます」


 二人とも、かける言葉が無いといった感じでしょうか。

 しんみりしてしまいましたかね。

 ちょっと気分を変えましょう。


「訓練についてはこれくらいにして、魔物についての確認をしてもいいでしょうか?」

「ああ、ベイル、スライムが二十とゴブリンが二十でよかったか?」

「正解だ」


 気がついたら、いつも二人が倒した後という感じだったので、今回は確認が必要だったのです。


 そういえば、スライムは赤色でしたが、スライムの核は青色のようです。

 核に赤色ボディーが重なった場所が紫色に見えましたので。

 ……あまり必要のない情報だったかな。


 さて、お二人には場所も一緒に確認してもらいます。


「魔物が出る場所も、ほぼ一緒か……」


 地図を見比べてみると、カインさんの言われるように、ほとんど変わりません。

 魔物の数と、魔物のコンビが違うだけという感じかな?


 ひょっとして、初級ダンジョンでは、中級ダンジョンに向けての体験ができるといった感じなのでは?

 まあ、まだ結論を出すには情報が足りません。

 考えるのはこれくらいにしましょうか。


 地下一階はこれくらいにして、地下二階に移動することにします。

 あ、その前に私の考えた予定を伝えておこうかな。


「すみませんが、このまま地下三階まで行き、いったん地上へ戻り準備をし直し、次はダンジョンの地下五階まで行く、という予定にしたいのですが……」


 二人とも理由が分からないようなので、説明しておきます。


「確か、地下四階には、腐らしたり壊したりする魔物がいるのですよね?」

「ああ、そうだったな」

「あまり行きたくない階だな」


 行きたくないって言われても困るのですが。

 カインさん……正直者ですね。


「地下一階から三階までの地図を確認し直し、四階ではアイテムをできるだけ守り、五階まで行けば何時でも五階に行けるようになるので休憩をする、というのでいいかと思ったのですが」

「なるほど、それでいい。カイン、あのこともう伝えているか?」

「え? ああ、まだだった」


 伝えなければいけないような情報ってなんでしょうか?


「これまで、騎士団専用の武器防具は壊されたことがないようだ」

「ええ! それって……」

「騎士団だけが知る秘密情報だ。他には漏らさないようにしてくれ」


 カインさん、サラッと重要な情報を伝えてくれましたね……。

 秘密を漏らせば……今まで武器や防具を壊されていた人達が黙っていませんね。

 いや、秘密は漏らしませんよ。商売人は信用が命ですからね、口は堅いです。


 でもこれって、確か……武器や防具のアイテムは、壊れたのではなく、壊れたアイテムと入れ替えられていたはず。


 ……ダンジョンの魔物さんって優しいですね。

 だって、ダンジョンで手に入れたアイテムでない武器や防具には、手を出さないという事なのでしょうから。


 ああそうか。

 おそらく、それだと魔物さんも困るのでしょう。

 だから、ダンジョンの中ではダンジョンで手に入れたアイテムの方がいいという噂を広めたのかもしれません。





更新が遅くなりましたが、読んで頂き、またブクマして頂きありがとうございます。

少し更新の間隔が開くかもしれませんが、執筆は続けておりますのでよろしくお願いします。

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