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30 酔っ払いが来店


 防具屋のご主人が帰られてから、しばらくはお客もまばらでしたが、そろそろダンジョン帰りのお客がやって来る頃です。

 ダンジョン帰り第一号は誰かな~と待っていると、女の子四人組がやって来ました。


「買い取りをお願いします!」


 お、黒髪のショートヘアのこの子がリーダーということかな?

 『木の杖』を持っている子です。


「初めてのダンジョンはどうだった?」

「アイテムマップがあったおかげで、とても助かりました!」


 四人とも元気よくお礼を言ってくれます。

 マップが助けになったようでなによりです。

 この子達は私の言葉を素直に聞いてくれたようで、アイテムバックを持って行き、初日からかなりのアイテムを持って帰って来たようです。

 アイテムの買い取りの計算をしながら四人組と話をしていると、別のお客さんが来られました。


「いらっしゃいませ……」


 声を掛けている途中で気が付きました。

 こやつ、酔っ払いです。

 店内をフラフラと歩き、棚にぶつかったりアイテムを床に落としそうになったりしています。

 日の明るい内からべろべろに酔っ払うとは……。

 家や酒場でなら許しますが、私の店ではゆるさん!


 酔っ払いは、カウンターの所にいる女の子四人組に気付いたようで、こちらに近寄って来ました。

 ひょっとして……女の子四人組に手を出すつもり?

 この酔っ払いは客と認めぬ!

 ……という事で、わがフリート一族の秘技をもって、全力で追い出しにかかることにします。


「お客様、何か御用でしょうか?」


 顔は常に満面の笑みですが、目だけは笑わずに鋭い視線を心がけます。


「おお? 可愛いね~。どうだい、これから一緒にどっか行こうぜ~」

「私はまだ仕事中ですので」


 酔っ払いの意識がこちらに向いたところで、フラフラしている体をさりげなく支える振りをして右肩をチョイと押します。


「おお?」


 体の向きが変わった所で、またチョイと腰の一部を押します。


「ああ、お帰りですか? 出口はあちらですよ?」


 酔っ払いが自分の思う方向に行けないことに戸惑っている間に、どんどん店の入口まで体をつついて誘導していきます。


「気を付けてお帰り下さい」


 店のドアを開けると、ナイスタイミングでベイルさんが近くにいたので、そちらに向かうように腰へ最後の一押しをしました。

 無事にベイルさんに捕まったようです。

 ベイルさんへお辞儀をし、すぐにドアを閉め、カウンターの所へ戻ります。


「待たせてゴメンね」


 急いでアイテムの計算を再開します。

 あれ? 四人の様子が変です。

 とてもキラキラした目でこちらをじーっと見ています。


「お姉様と呼ばせて下さい!」


 四人の息のそろった声に、思わず手に持ったアイテムを落とす所でした。

 いや、私にはちゃんと血の繋がった妹がいるから……とは言えない雰囲気です。


「急にどうしたの?」

「いけませんか?」


 ……そんな悲しそうな目で見ないで~!

 一人の視線でも辛いのに、四人から見つめられると駄目とは言い辛い。


「この町でのお姉様になって下さい。私達、他に相談できる人がいないんです」


 いや、相談なら聞いてあげるから、お姉様と呼ばなくても……と思うのですが。

 私の何がそんなに良かったのでしょうか?

 私にそちらの趣味は無いですからね!


「お願いします!」

「お願いします!」

「お願いします!」

「お願いします!」


 はあ……仕方ない。

 四人の熱意に負けて頷くと、とてもキラキラした笑顔で名前を教えてくれました。

 リーダーで黒色のショートヘアの子がアンナ。

 茶色のショートヘアの子がマリナ。

 茶色のセミロングの子がユリナ。

 黒髪のセミロングの子がヘレナ。

 ……何というか、似た者四人組です。


「お姉様、また明日もよろしくお願いします!」


 アイテムの計算が済んでお金を渡すと、元気に四人組は帰って行きました。

 この疲労感はいったいなんなのでしょうか……。


 女の子四人組が帰った後、ダンジョン帰りのお客さんが次々にやって来られました。

 面白三人組も順調に初級ダンジョンを攻略していっているようで、今日は地下六階の地図を買ってくれました。


 閉店前になってシェイラとジンがやって来ました。


「やっほー」

「あ、丁度よかった。先にお店閉めてから計算するね」


 この後の打ち合わせもしたかったので、少し早いですが店を閉めました。

 アイテムの計算を済ませ、お金も渡したところで、あのアイテムの話をすることにします。


「実はダンジョンで試したいことがあるんだけど、いいかな?」

「なになに?」

「ボス戦に関係あるのか?」


「そうそう。良いアイテムが手に入ったんだけど、ぶっつけ本番は無謀だから、今日この後試してみようと思ってるんだけど」

「いいんじゃない? やってみよう!」

「そうだな」


 二人とも賛成してくれたので、早速『大きな鍋のフタ』を見せました。


「ええ~! 何これ?」

「……鍋のフタ?」


 ふっふっふ……そうでしょう! 驚くよね!


「これ、ファイヤー系統の魔法を跳ね返してくれるみたいだよ」

「……」

「……」


 あ、二人とも言葉を失っています。


「中級ダンジョンで手に入るみたいだけど、これがあれば初級ダンジョンのボスも倒せると思うんだけど、どう?」

「……こんなアイテムがあったとは。見た目が間抜けだが、確かにこれなら何とかなりそうだな」

「これ構えるの? かっこわるいけど……ダンジョンの中ならまあいいや」


 二人とも納得してくれたようでよかったです。

 ついでに一緒に夕食を食べてからダンジョンへ行くことになりました。

 アイテム本の確認等は、ダンジョンから帰った後にすることにします。





遅くなりすみません。やっとパソコンが使えました。

これから年末にかけては更新が遅くなるかと思いますが、書くのを止めることはありませんので、今後ともよろしくお願いします。

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