28 装飾品屋のご主人が来店(地図画像あり)
1月2日地図画像挿入。
おはようございます。
朝食を食べ終わったので外へ出てみると、すでに店先の掃除をしている奥様方が数人おられました。
私の店から東側は食料品関係を扱う店と料理店があり、西側は食料品以外の店があります。
西側にある店を確認していると、丁度防具屋の奥様が掃除されているのを発見しました。
「あらサラサちゃん、おはよう。どうしたの?」
「おはようございます。あの、実はお願いしたいことがあるのですが……」
防具の材料となる物があるかもしれないので、ご主人に一度店に来てもらえるか聞いて欲しいと伝えると、快く引き受けて下さいました。
防具屋の奥様と話しをしていると、近所の装飾品屋の奥様も出てこられたので、無事お願いすることができました。
話しの流れで武器屋さんにも伝えてくれることになりました。有難いことです。
思っていたより早く話が済んだので、店に戻ってから庭に出て草むしりをすることにします。
今までも、空いた時間に少しずつ草むしりをしていたのですが、未だ終わりが見えません……。
いざとなったら斡旋所で草むしりの依頼でも出すことにしましょう。
草むしりをしながら目玉商品についても考えました。
目立つ場所に『白いブレスレット』を詳細説明付きで置いてみようと思います。
おそらく、何の『白いブレスレット』か分かってない人が多いと思うので。
さて、少し休憩してからお店を開けることにします。
お店を開店すると、すぐに常連さんが数人やって来られました。
ゲンさんは『魔物の肉』を十個買われ、ステラさんは注文していた『蜂蜜』六個を買われ、リケットさんは『薬草』を十個買われました。
リケットさんが帰るときに嬉しいご報告がありました。
明日から『薬草』は二十個欲しいとのことです。
しばらくすると、この町に来たばかりの初心者達がやって来ました。
可愛らしい女の子四人組です。この子達はおそらく十二歳だと思われます。
騎士の方の指導により、初級ダンジョンへと行く前にやって来たようです。
ダン君達の時と同じように説明すると、二人が『鉄の剣』を買い、一人が『鉄のナイフ』を買い、一人は魔法が使えるようで『木の杖』を買っていました。とてもバランスの良い組み合わせです。
四人は必要な物を買い終えると、早速初級ダンジョンへと出掛けて行きました。
女の子四人組が帰ってすぐ、装飾品屋のご主人が来てくれました。
「いらっしゃいませ。今日はわざわざ来て頂いて、ありがとうございます」
「いや、材料の仕入れついでに寄っただけだから気にしなくていい」
装飾品屋のご主人は気さくな方でした。
早速アイテムを見てもらうことにします。
「ここにある物で、使えそうな物はありますか?」
アイテムを見ると、何だか雰囲気が変わり、真剣な眼差しで品定めをしておられます。
「この店は、ダンジョンで手に入ったアイテムだけを扱っているはずだな?」
「はい、そうですが……」
「この『白いブレスレット』がバラバラになったものや、『青いイヤリング』が壊れた物なんだが、私が作った物のようだ……」
あまりの驚きに声も出ません……。
確認のため、目玉商品の所に置いていた各種『白いブレスレット』も見てもらうことにします。
「これは確かに私が作って売ったものだ……。いや、正確には私が作って売った後、誰かが魔法を付与したようだな」
「買われたお客様はどんな方ですか?」
「リンという名前で、いつも手紙で注文が入る。受け取りに来たときは……いつも仮面を付けていて顔が分からない。まあ、定期的にまとまった数を買ってくれるからいい客なんだが……」
……。
まさかこのような事態になろうとは……。どうしましょう。
いろいろと気になることはありますが、ひとまず置いておくことにします。
これは考えようによってはチャンスかもしれません。
「あの、この壊れたりバラバラになったりしたものを修理することはできますか?」
「ああ、付与された魔法は消えてしまっているが、自分が作った物だから修理できるが……ここまで壊れていると、部品として扱った方が楽だな」
交渉の結果、定期的に買い取ってもらえることになりました。
「ありがとうございます!」
「いや、こちらこそいろいろと手間が省けるから助かるよ。……あれ? これとこれは何かね?」
「ああ、それは『スライムの核』と『魔物の骨』ですが……?」
「これが?」
何やら手にとってじっくり見ておられます。
いったいどうしたのでしょうか?
「これは、装飾品に使っている石だね……」
え? 今なんて言われました?
「なぜわざわざこんな形にしているんだ?」
……。
「……石ですか?」
「ああ、石だ。石自体は安物だがこの辺にはない。いつも産地まで買い付けに行っていたんだが……」
「もしかして、『スライムの核』がイヤリングで『魔物の骨』がブレスレットですか?」
「そうだ」
なんということでしょう……。
また新たな謎が出てきました。
どうやら、どちらも元々の石の形はもっと大きくてゴツゴツしているそうです。
特殊な加工をして磨くことで、綺麗な青色と白色の石になるのだそうです。
「まさかここで仕入が出来るとは思わなかったな。いや助かるよ」
まさかの新事実でしたが、これは嬉しい誤算でした。
装飾品屋のご主人は一旦自分の店に帰り、仕入の時に使う荷車を引いて戻って来られました。
まずは在庫の少ない『バラバラのブレスレット』三十三個と『壊れたイヤリング』八個を買われました。
それから、在庫の多い『スライムの核』と『魔物の骨』を、今回は百個ずつ買われました。
一個の値段は安いですが、これだけの数が一気に売れると気分爽快です!
装飾品屋さんとは、今後も良い付き合いが出来そうです。
装飾品屋のご主人を見送っていたら、防具屋と武器屋の息子さんが連れ立って来られました。
「いらっしゃいませ。今日はわざわざ来て頂いて、ありがとうございます」
「やあ、本当は親父が来た方がよかったんだが、話を伝える前に仕事を始めてしまってね」
どうやら、武器屋と防具屋のご主人は根っからの職人気質なようで、仕事を始めたら話かけられない状態になってしまうそうです。
息子さん達は修業中のようで、ある程度は分かるようですが判断の付かない物もあるそうです。
「とりあえず見せてもらってもいいかな?」
お二人に早速アイテムを見てもらいました。
交渉の結果、武器屋の方は『折れたナイフ』二十五個と『折れた剣』十一個を買われ、防具屋の方は『壊れた防具』を二十一個と『破れた服』を十個買われました。
防具屋の方が『破れた服』を買われたのが予想外だったので、何故買ったのか理由を聞いてみました。
専門用語が多くて詳しい内容はよく分かりませんでしたが、どうやら皮のコーティングをする時に使うようです。
「これはなんだい?」
「それは『魔物の皮』です」
防具屋の方に尋ねられたので答えると、手にとって見られ始めました。
まさか、また何かあるのでしょうか?
「これ、何の『魔物の皮』か分かるかい?」
「いえ、私には分からないのですが……」
「これはひょっとして……いや、本物にしては柔らかいか……」
何やら考え込み始めました。
「おい、そろそろ戻らないと怒られるぞ!」
武器屋の方がそう声をかけて下さったので、考えるのは一旦やめて戻られるようです。
何か気になることがあるのか、防具屋の方は『魔物の皮』を一個買うことにしたようです。
お二人はアイテムバックを持っていたようで、買ったアイテムをバックに入れて帰られました。