21 謎の部屋に進入
9月5日文章訂正。内容は変わりません。
『ゴミ』問題も無事に片付き、昼食まで時間があるので、少し休憩したら初級ダンジョンへ行くことにします。
少しレベル上げをして、シェイラとジンのレベルに追いついておきたいです。
それから、地下五階を入念に調べる予定です。
◇◇◇
初級ダンジョンでレベル上げをし、無事レベル9となりました。使える魔法は変化なしです。
では、これから地下五階を調べたいと思います。
まずは『休憩所』の確認です。
今回は南側の通路にドアがありました。
入ってみると、前回と部屋の中は同じです。他に何かないか調べましたが、何もありませんでした。
今回も部屋を出るとドアが消えていました。
次に向かったのは、北東にある空間です。
三人で来た時『関係者以外、立入禁止』の文字があった場所を確認します。
空間の南側に来て調べてみると、壁と区別が付き難いドアらしき物がありました。ドアノブが見当たらず、どうやって中に入るのか分かりません。
ドアには『関係者以外、立入禁止』の文字が刻まれています。
やはり、ここには何かあるようです。
取り敢えず、ドアをコンコンとノックしてみました。
「今開けるだー」
……返事が来ました。なんだか不安になってきました。
少し待つと、ドアの部分が一度奥側へ窪み、右側へスライドして開きました。
「入るだー」
……開いたドアの奥から声がします。
不安もありますが、せっかくドアが開いたので中へ入ることにします。
「お邪魔します……」
恐る恐る声をかけ、先程声がした方へ進んで行きます。
すると、背後でドアが閉まる音がしたので思わず振り返ってしまいました。
「お待ちして……」
近くで声がしたのでそちらを向くと、スライムを頭に乗せたゴブリンと目が合いました。
「……。ギャ」
「ギャアー!」
「ポヨー!」
私が思わず悲鳴を上げようとしたら、それ以上に驚いた様子のゴブリンとスライムが、悲鳴をあげながら走り回っています。
慌てふためいているのを見ていると、こちらは逆に冷静になってきました。
私が今まで戦ってきたダンジョンの魔物達は、叫び声っぽい声は出しても喋ったりしたことはありません。
しかも、初級ダンジョンで戦った魔物達は、この悲鳴をあげて走り回っている魔物達のそれぞれ半分ほどのサイズです。このゴブリンは私と身長が同じ位ではないでしょうか。
しばらく走り回って疲れたのか、ゴブリンが息を切らし立ち止まりました。
スライムはずっとゴブリンの頭の上でポヨポヨ跳ねていますが。
そろそろ声をかけても大丈夫でしょうか?
「あの、攻撃しませんので怖がらないで下さい」
どう声をかけたらいいのか分からないので、戦う意思がない事を伝えてみます。
「ゼーゼー……。分かっただー」
「ポヨー」
私が攻撃する様子がないのを見て、落ち着いてくれたようです。
「お客かー?」
「ポヨー?」
ゴブリンが尋ねてきました。
まあ、お客と言えばお客かもしれません。
「はい、聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」
私がお客だということで、机と椅子のある場所まで案内してくれました。
私が席に着くと、飲み物と『クッキー』を出してくれました。
とても親切な魔物です。今後、ゴブリンさんとスライムさんと呼ぶことにします。
「『美味しい回復薬』と『クッキー』だー。食べるといいだー」
「ポヨー」
おや? 『クッキー』は分かりますが、『美味しい回復薬』とは何でしょうか?
「美味しそうですね。『美味しい回復薬』とはどんな物ですか?」
「中級ダンジョンへ納品してるだー。飲んでみるといいだー」
「ポヨー」
……納品?
とりあえず、ゴブリンさんとスライムさんに勧められるままに飲んでみます。
「これは! ひょっとして蜂蜜が入っていますか?」
これは美味しいです。速く中級ダンジョンへ行けるようになりたいです。
「そうだー。それでー、何しに来ただー」
「ポヨー」
そうだった。用事があって来たわけではなく、ここに何があるのか調べに来ただけなんだけど、折角だから聞きたいことを聞いてみよう。
「いろいろと聞きたい事があるのですが、よろしいですか?」
ゴブリンさんは少し頭を傾げて考えているようです。
スライムさんは、ゴブリンさんの頭の上で体を少しだけひねっています。
「ここに来れたということはだー、あの本を持ってるのかー?」
「ポヨー?」
ゴブリンさんは手をぽんと叩き、スライムさんはポヨっと弾み、何かに気付いたように本について聞いて来ました。仲の良いコンビです。
私もアイテム本が何か関係しているのかと、ウエストポーチから取り出して見せることにします。
「この本の事ですか?」
「そうだー、これだー。聞きたい事を聞いていいだー。答えられる事は答えるだー」
「ポヨー」
やはりこの本が関係していましたか。
ただ、答えられることと答えられない内容があるようです。
何を聞いたらいいのかは、話しをしながら探るしかありません。
まずは、気になっていたことを聞くことにします。
「あの、初級ダンジョンで出会うゴブリンやスライムと、あなた方ゴブリンさんとスライムさんは、同じ魔物なのでしょうか?」
もし同じなら、今までのように戦える自信がありません。
「同じだが違うだー。気にせず戦うといいだー」
「ポヨヨー」
どうやら、私が気にしていることを察してくれたようです。
「同じで違うとはどういう事ですか?」
「ダンジョンにいる我々はー、偽物の我々だー」
「ポヨー」
気にせず戦えばいいことは分かりました。
「偽物とはどういうことですか?」
さらに突っ込んで聞いてみます。
「我々を基に作ったそうだー。これより詳しいことは分からないだー」
「ポヨー」
聞けば聞くほど謎が深まりますが、ここで聞ける情報には限りがあるようです。
さて、次は何を聞きましょうかね。