20 アイテムNo.1を大量に販売(地図画像あり)
1月2日後書きへ地図画像。
おはようございます。まだ外は暗いです。
今日はカインさんとの約束があるので、日の出前に家を出ないといけません。
朝食は軽く済ませ、これだけ朝が早いと途中でお腹が空きそうなので、簡単に食べられる物を二人分作っておきます。
日の出頃、初級ダンジョンの門へ行くと、すでにカインさんが来ていました。
「おはようございます。すみません、お待たせしましたか?」
「おはよう。先程来たばかりだから大丈夫だ」
では、ダンジョンに入る前に確認をしておきます。
門番の方には、カインさんが事情説明をしてくれたそうです。
これで、『ゴミ』を大量に門の近くへ置いても大丈夫です。
しかも、騎士団が所有している荷車を一台用意して下さっています!
さすがカインさんです!
「この時間、地下一階では『ゴミ』がたくさん手に入るんです。このアイテムマップは差し上げるので、アイテムの場所を確認して下さい」
地下一階のアイテムマップを渡すと、カインさんがアイテムマップを見て固まっておられます。
「どうされましたか?」
「これは……作ったのか?」
「はい、まだ初級ダンジョンの地下八階までしかありませんが」
「店に貼ってあった、アイテムマップをプレゼントとは、これのことか」
「はい、そうです。今後、アイテムマップも売ることにしました。今はまだ一部の方にしか話していませんが、地下十階までのマップが出来次第、売り出そうと思っています」
カインさんはなにやら考え込み始めましたが、すぐに私の視線に気付いたようです。
「いやすまない。これは面白いマップだな。他の階のマップも欲しいな」
まさかカインさんまで欲しがるとは思いませんでした。
「帰りに店に来ていただければ、お売りしますよ」
「有難い、そうさせてもらうよ」
マップの話しはそこまでとして、さっそくダンジョンへと向かいました。
私のウエストポーチには『ゴミ』を入れ、カインさんの背負い袋へは『ゴミ』以外を入れてもらうことにします。
地下一階でアイテムを集め、地下二階へ下りてリセットし、すぐ一階へ戻ってアイテムを再び集めると、もう荷物が持てません。
地上へ戻り、荷物を置き、もう一度ダンジョンへ行き、同じ事を繰り返します。
とはいうものの、一回で十二個から十三個手に入りますので、二回目ですでに二十五個集まってしまいました。
「これで終わりにして、持って行くか?」
それでもいいのですが、ひょっとしたら、また大量注文が入ると困りますので、もう二十五個位はあってもいいかと思っています。
今ならまだ倉庫に余裕がありますので。
「この際、もう二十五個集めてもいいですか? また大量注文されるかもしれないので」
カインさんは、それもそうかと快く引き受けてくれました。
結局、合計で五十一個の『ゴミ』が積み上がっています。何ともいえない景色です。
門番の方の視線が痛いです。
「まずは二十六個、店の倉庫に入れに行き、戻って来て、残りの二十五個をレオンさんの家に運びましょう。カインさん、お願いします」
「力仕事は任せてくれ」
カインさん、とても心強いです。
荷車は『ゴミ』が三十個乗せられそうな大きさですが、無理はせずに、予定通りに運ぶことにします。
倉庫に入れ終わり、残りを取りに行き、レオンさんの家へと向かいます。
「ここがレオンの家だ」
カインさんはそう言うと、勝手に門を開け、中に入って行きます。
とても広い敷地の割に、家はそこまで大きくありません。
庭が広く取ってあり、一部は畑になっているようです。
そして……庭の一部がとても臭いです。
これ、ひょっとして……。
「来たか。ここに置いてくれ」
レオンさんはすでに起きて庭で作業をしていたようです。その臭い場所で……。
カインさんが荷物を下ろしてくれました。
「レオンさん、何をされているのですか?」
あまりにも気になったので、尋ねてみました。
「これか? これは『ゴミ』から肥料ができないか研究中だ。袋も再利用したいが、汚れは取れても匂いが取れない。消臭剤の様な物を開発しないと難しいな」
ここに勇者がいました!
『ゴミ』を開けて中身を確認するとは……。
「『ゴミ』の中には何が入っているのですか?」
「おそらく、魔物の糞だろう。」
……あまり知りたくなかったかも。
現在、店の倉庫に大量の魔物の糞があるということになります。
「もう少しで出来そうなんだが、何かが足りないようでうまくいかない」
そういえばアイテム本に、肥料にできないかと書いてあったアイテムがありました。
「あの『腐った食物』は、肥料にならないのでしょうか?」
「なに!」
レオンさんが、なにやら考えながら歩き回り始めました。
「おい、どうしたんだ? 荷物下ろし終わったぞ」
カインさんがレオンさんに声をかけると、レオンさんが急に立ち止まって私の方を向きました。
「『ゴミ』を二十五個と『腐った食物』を二十五個、すぐ持って来い!」
「あの、今『ゴミ』を二十五個持って来たばかりですが……」
「そんなことはどうでもいい。すぐ持って来い」
どうでもよくない!
よくないけど……しかたない。
まあ、在庫が減るのは歓迎です。
「おいレオン、もう少し分かるように説明してくれ」
カインさんもレオンさんの様子に呆れ顔です。
「これはこれで実験することが決まっている。新たに実験するのに『ゴミ』が足りない」
意味はよく分かりませんが、仕方ない。
分かりました。持って来ればいいんでしょ!
「カインさん、お願いしてもいいですか?」
カインさんが快く引き受けてくれたので、荷物を取りに帰ることにします。
出て行こうとする私を引き止め、レオンさんがポケットから何か出しています。
「店で値段は見たが、これで金額あってるか?」
そう言うと、レオンさんが汚れた手で175Gを手渡してきました。
ぎゃー! 金額はあっているけど、手が汚れるし臭いよ!
泣く泣く受け取り、175Gを持った手は他に触れないように気を付けながら戻りました。
店に戻って、カインさんに待ってもらい、お金と手をよく洗いました。
匂いを取るのに少し時間がかかってしまいました。
その後、無事レオンさんに荷物を届け終わったので、カインさんに再び店まで来てもらい、アイテムマップを渡しました。
手伝ってもらったお礼に、『ゴミ』以外のアイテムの買い取り金額を渡そうとしたら、気を遣う必要はないと断られてしまいました。
「カインさん、今日はありがとうございました。昼食までまだ時間があるので、よかったら食べて下さい」
「おお、ありがとう」
これは喜んで受け取ってくれました。
「また同じような事があったら言ってくれ、手伝うから」
そう言うと、カインさんは帰っていかれました。
カインさんの後ろ姿を見送りながら、思わずその姿を拝んでしまいました。