19 中級アイテムNo.42を獲得
昼食前になると、シェイラとジンがやって来ました。
本当は今晩も二人とダンジョンへ行きたかったのですが、明日の事もあるので、予定変更です。
「今日も夜行く?」
シェイラが尋ねてくれたので、昨日の夜の買い取り金を手渡しながら簡単に事情説明しました。
「それは残念ですね」
「私も二人と行きたかったけど、明日が早いからね」
その代わり、別の提案をしておきます。
「明日は定休日だから、昼食後から一緒にダンジョン行きたいな。どうせだから、昼食を一緒に食べようよ」
私がそう言うと、二人とも喜んで賛成してくれました。
「じゃあ、明日の昼はリケットさんの店で食べよ~」
シェイラの意見に私とジンも賛成です。明日の約束が出来ました。
シェイラとジンはこれから昼食を食べてからダンジョンへ行くようです。
「今日から、肉屋のステラさんの店で新商品が出ているはずだよ。私も今から昼食だから、一緒に買いに行かない?」
「お、いいねぇ!」
お店に休憩中の札をかけ、三人でステラさんの店でお惣菜を買いました。ついでなので、近くの店でパンも買い、うちの台所で一緒に食べました。
昼食後、しばらくすると、何やら疲れた様子の男性が一人入って来られました。
「いらっしゃいませ」
私が声をかけると、すぐにカウンターの所まで来られました。
「ここでアイテムの買い取りをしてくれると聞いたんだが。……本当になんでも買い取ってくれるのか?」
ひょっとしてこの方も、騎士の方に何か聞いて来たのでしょうか?
「この町のダンジョンで手に入るアイテムなら、何でも買い取りますよ」
私がそう言うと、手に持っていた物をカウンターに置かれました。
この方が来店されてから、私が気になっていた物です。
「……これ、買い取ってもらえるか?」
これ、どう見ても『鍋のフタ』ですよね? 結構な大きさです。
「私はまだ初級ダンジョン以外に行ったことがないのですが、これはどうやって手に入れたのですか?」
少し気になったので尋ねてみました。
「ああ、それは中級ダンジョンで手に入るんだが……」
話を聞いたところ、どうやら例の食べ物を腐らしたり武器を壊したりする魔物の魔法が原因のようです。
この方は、中級ダンジョンで手に入る『鉄の盾』を持っていたらしいのですが、イタズラの魔法により、『鍋のフタ』というガラクタに変わってしまったそうです。
「少し確認させて下さい」
買い取り金額をこっそり確認してみます。
『アイテムNo.42 大きな鍋のフタ
価格:8000G』
驚愕の金額です。なぜこんな値段なのでしょう?
詳細説明が見たい所ですが、買い取らないと情報が見られません。
「金額が……4,000Gとなります。買い取りでよろしいですか?」
「なんだって! もちろんだ」
そりゃ驚きますよね。
来た時には元気がなかった男性が、なんだか元気になっておられます。
買い取った後、あまりにも気になったので、すぐに詳細説明をこっそり確認します。
『アイテムNo.42 大きな鍋のフタ・一個
価格:8000G
……鍋の下の部分を無くし、フタだけになってしまった。意外としっかりとした作りで、特定の魔法もはじき飛ばせる優れ物。物理防御に5プラス、ファイヤー系統の魔法をはじくことができる』
鍋だから火に強いという事でしょうか? 何気に高性能です。
まだ男性がお金を持って呆然と立っておられるので、このことを伝えておきましょう。
「この『大きな鍋のフタ』は、物理防御が上がるだけでなく、ファイヤー系統の魔法をはじくことも出来るようですが、売られて大丈夫ですか? 今ならお返し出来ますよ」
男性は、私の言葉を理解するのに少し時間がかかったようです。
「なんということだ。……いや、やはり今回は売ろう。『鍋のフタ』では仲間に笑われる。『鉄の盾』なら手に入り易いし」
まあ、その気持ちは分かります。どんなに格好良く戦っても、手に持っているのが『大きな鍋のフタ』では、何となく雰囲気が台無しです。
少し落ち着いて思い出したのか、男性が背負い袋から『腐った食物』を出し、カウンターに置かれました。
「これも買い取ってもらえるのか?」
おそらく、騎士の方から聞いたものの信じられずにいたが、『大きな鍋のフタ』を買い取ったことで、売ってみようという気になったようです。
「はい、一個2Gになります」
全部で三個あったので、6Gでの買い取りです。
「ありがとう、助かった。また来るよ」
そう言うと、男性客は来たときよりも元気になって帰られました。
今日は『魔物の肉』以外、食べ物関係しか売れていません。
おそらくこの後、面白三人組とシェイラとジンの買い取りがあるので、金額的に少し不安です。
まあ、ここまでが順調すぎたということもあります。こんな日もあるでしょう。まだ四日目ですし。
夕方になり、リケットさんが薬草を買って帰られ、その後、面白三人組がアイテムを売りに来ました。
「はい、合計で10,780Gになります」
今日はアイテムバックを借りて行ったようです。
地下三階にも行ったようで、『鉄のナイフ』と『折れたナイフ』がありました。
「おお、すごい! ありがとうございます!」
三人とも感動しています。この調子でいけば、お金に困ることもないでしょう。
「地下三階までいったのなら、地下四階からのアイテムマップを買いますか? まだ地下八階までのマップしかありませんが」
「買います!」
ダン君が元気に答えてくれ、残りの二人もうなずいてくれています。
「まだ地下三階まででレベル上げをするつもりですが、取り敢えず地下五階までのアイテムマップが欲しいです」
ルーク君が値段を聞いて来たので、地下四階が400Gで五階が500Gだと伝えると、地下五階までのアイテムマップを買ってくれました。
ダン君がまだ何か言いたそうにしていましたが、ダン君はルーク君とコルト君に両脇を持たれ、引きずって帰られました。
「やっほー!」
三人組が帰ってすぐに、シェイラとジンがやって来ました。
二人とも買い取りに慣れてきて、私が計算し易いように並べてくれます。とても助かります。
「はい、今日は13,900Gです」
お金を渡して明日の事を話していると、店を閉める時間が来たので二人は帰って行きました。
店を閉め、簡単に夕食を食べた後、今日のお金の計算をしました。少し赤字です。
今日は目玉商品が昨日と同じままでした。今後どうするかまた考えねばなりません。
そして、アイテムの累計個数が千個を超えたので何かあるかと思いましたが、何も起こっていませんでした。残念です。
さて、明日は早いので、今日はもう寝ることにします。




