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17 怪しい人物が来店


 おはようございます。お店が開店してから4日目です。

 明日はお店の定休日なので、その事を伝える張り紙をしておきます。


 お店を開くと、早速、猟師のゲンさんが御来店です。


「おはようございます、ゲンさん」

「おう、おはよう。十五個くれ」


 前回より五個多いお買い上げです。

 ゲンさんはこの後、かなり大きな仕掛けを作らないといけないらしく、持参の入れ物に『魔物の肉』を入れ、急いで帰られました。


 ゲンさんが帰ってすぐに、黒いローブを身に纏い、目深に黒いフードを被った人物が入って来ました。

 ゲンさんが出て行くのを待っていたかのようなタイミングです。


 このお客は……服装ですぐに分かりました。

 町で噂の、ダンジョンを研究しているという、怪しい格好をした男性です。


 しばらく店内をキョロキョロと見回した後、こっそり一個置いてある『ゴミ』を確認し、カウンターへとやって来ました。

 何だろう……少し臭います。


「お前か、『ゴミ』を集めているのは」


 何なんですか、その問いかけは。『ゴミ』限定で集めているかのように言われるのは心外です。


「この町のダンジョンのアイテム全般を扱っています。今はまだ初級ダンジョンの物が主ですが……」

「そんなことはどうでもいい。『ゴミ』を家まで運んでくれ」


 どうでもよくない!

 しかも配達しろという事でしょうか?


「一人で店を経営していますので、配達はしていないのですが」

「そんなことはどうでもいい。これで買えるだけ持って来い」


 どうでもよくない!

 何なんですかこの人は!

 それに50Gって、二十五個も運ばせる気ですか?


「二十五個も在庫がありませんし、持って行くことも無理なのですが!」


 顔が少し引きつっているのが自分でも分かります。

 言い方も少しきつくなってしまいました。


 やっと私の雰囲気を察したのか、少し考え込んでいます。


「今何個ある?」

「十五個です」


 また少し考え込んでいます。


「明日、店は休みだろう?」


 この人は、いったい何を言いたいのでしょう?


「はい、定休日です」

「知り合いの騎士に伝えておく。頼んだぞ」


 いや、だから何を?

 ちょっと、お金を置いたまま帰ろうとしないで下さい!


「すみません、意味がよく分からないのですが?」

「騎士に聞け。後で来さす」


 私が呆気にとられているうちに、怪しい男性は帰ってしまいました。


 …………。

 考えた所でどうしようもないので、この件は後回しです。

 後で来るという、騎士の方の登場を待つしかありません。

 今の遣り取りで、朝から疲れてしまいました。


 やれやれと椅子に座って、しばらくするとカインさんがやって来られました。

 ……まさかね。


「おはようございます」

「おはよう。あの、ちょっといいかな?」


「まさか、先程来られた方の件でしょうか?」


 あ、つい言ってしまいました。


「いや、そうなんだけど違うというか、何だか言ってることが理解できないうちにベイルに丸め込まれたというか……」


 なんというか……お互いに「何が何やらよく分かっていない」ということが分かりました。

 取り敢えず、まずはカインさんの方の話を聞いてみます。


「朝の見回りが済んで休憩で詰め所へ帰るためにベイルと歩いていたら、ベイルに用があるとかでレオンが来たんだ」


 どうやら、「レオン」というのが怪しい男性の名前のようです。

 知り合いの騎士とは、カインさんではなくベイルさんでした。


「レオンがベイルに、『ゴミ』を買うのに手を貸すように言っていたのは聞いていたんだが……」


 なぜそれでカインさんが来たのでしょうか?


「……いつの間にか、私が来ることに決まっていた」


 いや、カインさん話を端折りすぎです。

 何か話せない内容でもあるのでしょうか?

 まあ、何となく聞かれたくなさそうなんで、敢えて聞いたりはしませんよ。


「明日は早朝から昼食前までなら手伝えるから、何をすればいいか教えて欲しいんだ」


 そうですか。……レオンさんという方が何を言いたいのか、だんだん分かってきました。

 では、こちらの情報も伝えておきましょう。


「そのレオンさんという方が来られて、『ゴミ』を二十五個家まで配達するように言われたんです」


 私の言葉に、カインさんも驚かれてます。

 この気持ち、分かってくれますか!


「在庫が足りないですし、そもそも配達をすることは出来ないとお伝えしたら、明日が定休日だという確認をされ、騎士の方に伝えると言われ帰って行かれました」


 我ながらおかしな文章です。

 でも、事実なので仕方ありません。


 カインさんも、レオンさんという方が何を言いたいのか分かってきたようです。

 思わず二人で溜め息をついてしまいました。


「要するに、明日なら店が休みだからカインさんに手伝ってもらい、ダンジョンで『ゴミ』の数を揃えて家まで持って来いという事ですね」

「そのようだな」

 

 カインさんと意見がまとまりました。


「どうしたいですか?」


 カインさんが優しく尋ねてくれます。


 おそらく、レオンさんの依頼を断って欲しいと言えば、カインさんは断りに行ってくれることでしょう。


 しかし、これはある意味チャンスだと気付きました。

 そう、『ゴミ』の数を処理するチャンスです。


 騎士の方が協力して下さるという事は、ダンジョンの入口に『ゴミ』を置かせてもらえるという事です。

 そして、レオンさんという方のおかげで、二十五個は確実に売れるという事です。


 そう考えると、いやな気持ちがだんだん薄れてきました。

 私がどう断ろうか迷っているとでも思ったのか、ベイルさんからの伝言を伝えてくれました。


「二度あることは三度ある」


 まだ一度目ですが……。


 おそらく、この依頼を受けると、また同じようなことを何度も頼まれるようになる可能性が高いと、警告してくれているのでしょう。


 ふっふっふ……受けようじゃありませんか、この挑戦!


「カインさん、お願いがあるのですが」

「何だい?」


「明日の日の出頃に、背負い袋を持って、初級ダンジョンの門の前に来ていただけますか?」

「!!!」


 予想通り、カインさんが驚いてくれています。


「それはかまわないが、本当にいいのか?」


 心配をしてくれています。ほんと、いい人ですね。


「はい。カインさんこそ、本当に大丈夫ですか?」


 騎士としてのお仕事に支障をきたすようではいけませんからね。


「それは問題ない。体力には自信があるから」


 頼もしいお言葉です。


 という事で、明日の待ち合わせを約束した後、カインさんは詰め所へと帰って行かれました。




明日22時更新予定。

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