13 ある日、ある時、ある場所で①(シェイラ&ジン)
斡旋所では、大きく分けて二つの業務がある。
ダンジョンへ行く人への依頼や仲間の斡旋と、町中で働く人への仕事の斡旋である。
ダンジョンへ行く人達は、時間帯をおよそ朝・昼・夜の三つに分けて行動している。
だいたいの人が、朝・昼・夜の食後に動く為、食後の時間帯に利用する人が多い。
シェイラとジンも、一緒にダンジョンへ行く仲間を見つける為、昼食後にやって来ていた。
二人とも主に剣を使って戦うので、できれば魔法で戦える人を探していたのだが、なかなかいい人が見つからないでいた。
魔法を使える人は結構いるにもかかわらず、一緒に行動できる仲間が見つからない。その主な原因は、二人の容姿にあった。
シェイラはスレンダーで、女性の平均より少し背が高く、ブロンドの髪を高い位置で一つにまとめている。整った顔立ちなので、真剣な表情で黙って立っていたら下手な男性より格好良かったりする。
しかし、しゃべり方や感情がすぐに出てしまう顔のため、とても親しみ易い可愛らしい雰囲気となっていて、周囲の視線を集めていた。
ジンはシェイラより頭1つ分程背が高く、引き締まった体は彫刻のようである。癖のない濃紺の髪は短く切られ、整った顔立ちのうえ、さらに理知的な瞳に落ち着いた話し方で、こちらも周囲の視線を集めていた。
そんな二人とお近づきになりたい人々は多かったが、自分達の容姿しか見ずに近付いてくる人々に、二人ともいいかげん嫌気がさしていた。
幼なじみで気兼ねもないので、お互いの虫除けも兼ねて、一緒に行動するようになっていた。
そんなわけで、斡旋所には来たものの、あまり期待はせずにいた。少し待ってもいい出会いがなければ、また二人でダンジョンへ行くつもりだった。
そんな時に出会ったのがサラサである。この同い年の女性は、人の外見にあまり興味がないようで、二人の顔を見ても特に変化がなかった。
シェイラはそのことが嬉しくて、自己紹介した後すぐにダンジョンへ行こうとしてしまい、ジンとサラサに慌てて止められたのだった。
サラサは基本的に商売人だからなのか、外見よりも人の本質を見極めようとするようである。そのためか、自分の容姿にもあまり興味がなさそうで、かえって周りの方が少し心配しているようだった。
このサラサという女性は、なぜか自分では平均的な容姿と思っているようだが、そんなわけがない。身長こそ平均的だが、綺麗な赤いセミロングの髪に、いつも笑顔の可愛らしい顔立ちで、胸が平均より少し大きめと、とても魅力的な女性である。
サラサとはすぐに打ち解けて仲良くなり、ダンジョンでの戦いも満足のいくものとなった。しかも、アイテムの買い取りまでしてもらい、お金の心配もなくなっていた。
サラサと分かれた二人は、アイテムバックを斡旋所に返し、この町で利用している安くて料理の美味しい宿へと戻った。
「今日は、この町に来て一番の収穫だったね~。今晩は無理してダンジョンへ行く必要もないね」
シェイラの言葉に、ジンも深く頷いた。
「ああ、サラサと出会えたのは大きいな」
「驚きの発見もあったし、楽しかったな~」
「そうだな。宝箱以外でアイテムが手に入ることも分かったし、転移の魔法も初めて体験できたし、何より噂の人物がサラサだと分かったのが面白かったな」
今朝、二人が町を歩いている時に、ダンジョンのゴミを両手に持って歩く可愛い女性の噂話があちこちでされていたのだった。
今まで町の人は、ダンジョンを研究している怪しい男性以外がゴミを持ち帰っているのを見たことが無かった為、印象的な姿として噂になったようだった。
その後、何度かサラサの店に足を運んだ二人は、その度に嬉しい驚きの連続となった。
「サラサから相談されるなんて、もう私達親友だね!」
店から出た後、シェイラが嬉しそうにニマニマしていた。
「シェイラ、顔」
思わずジンが注意するほど、にやけた顔になっていた。
「それにしても、さすが商売人ですね。発想が面白い」
ジンの言葉に頷くシェイラだった。
「でも一番嬉しいのは、一緒に食事食べたり、定期的にサラサと一緒にダンジョンへ行ったり出来るようになった事かな~」
「そうだな。良い友人が出来た。……そこで相談なんだが」
「なになに~」
シェイラは、人から恋愛関係以外の相談されるのが好きなので、また顔がにやけてジンに注意されるのだった。
「今後は親しい友人同士として、アイテム買い取り金額は、平等に三等分にしたらどうかと思っているんだが」
「おお~。さすがジンだね。私達の生活も落ち着いてきたし、良いんじゃない? どうせなら今後の付き合いも考えて、手に入れたアイテムの中で私達が必要なアイテムがあれば、融通して貰おう!」
「そうだな。タイミングを見て、話を持ちかけてみよう」
シェイラとジンは、ダンジョンの町で得難い友人と出会い、今後の予定を楽しみにしながら話し合うのだった。