12 ダンジョン初心者が来店
8月17日誤字訂正
地下7階を中心にしばらく動き、荷物が持てなくなったところで店へと戻りました。
シェイラとジンの二人も、アイテムバックを斡旋所に返却し、そのまま宿へ帰るとのことです。お金は明日取りに来るようです。
戦いの合間に二人と色々話をしたところ、どんなアイテムでも買い取ってもらえることで、少し懐に余裕ができたそうです。
そういうこともあり友達にもなりましたので、今後三人でダンジョンに行く時には、手に入れたアイテムの買い取りは合計金額を三等分しようということになりました。そのかわり、手に入れたアイテムでシェイラとジンが欲しい物があれば、融通することになりました。
今回は特に欲しいものが無いそうなので、全部買い取りになります。
お金の計算をする前に、今日新たに手に入ったアイテムの確認をしたいと思います。
『アイテムNo.3 毒草・十個
価格:100G 初回入手可能階:七階
……ダンジョンの中で育った毒草。人間が食べるとダメージを受けるが、ある特定の魔物は違うようだ。人間の体力を20マイナス、特定の魔物の体力を20回復』
『アイテムNo.16 皮のコテ・二個
価格:1000G 初回入手可能階:七階
……ある魔物の皮を使ったコテ。丁寧に鞣しているので着心地が良い。物理防御に2プラス』
『アイテムNo.25 魔物の皮・七個
価格:50G 初回入手可能階:七階
……魔物の皮の一部分。何か装備品が作れるかも』
予想通りといいますか、紫色の草は『毒草』でした。残念です。
ただ、説明文が気になります。特定の魔物にとっては体力が回復出来るようです。
……特定の魔物って何だろう?
それと、『皮のコテ』が手に入ったので、一つは自分用にします。
さて、お金の計算済んだら、もう寝ようと思います。
◇◇◇
おはようございます。開店から三日目の朝となりました。
今日は、昨日考えた方法で武器や防具を売ろうと思います。そう、『ダンジョン初心者用三点セット』の販売です。
目玉商品を置く場所に、張り紙と共に『鉄のナイフ』『鉄の剣』『木の杖』『布の服』『皮の胸当て』を置きます。
『ダンジョン初心者用三点セットがお得です!
購入された方には、初級ダンジョン地下三階までのアイテムマップをプレゼント!
詳しくは店主へお尋ね下さい』
こんな感じでどうでしょう。
三種類の武器から一つと、服と胸当ての三点セットを買ってくれたら、値引きではなくプレゼントがつきます。
なぜ値引きを止めたかというと、武器屋や防具屋で売っている金額より、すでに安いという事実を知ったからです。
マップは展示して描き写されたら意味がないので、尋ねられた時にマップ見本を見せるつもりです。
店を開けてすぐに、リケットさんがやって来ました。
「おはよう、サラサちゃん。薬草買いに来たよ」
そういえば、リケットさんに確認しないといけないことがありました。
明日はリケットさんの店が休みで、明後日は私の店が休みなので、明後日用の薬草を今日買っていくかどうかの確認です。
「おはようございます、リケットさん。明後日の分も、今日薬草を買われますか?」
「そうだったね。明後日の分か……。明日の夕方に買いに来るよ」
「わかりました。では、今日の分の薬草です。明日もまた用意しておきますね」
「ありがとう。じゃ、明日もよろしく」
そう言うと、リケットさんは薬草十個を買って帰られました。
リケットさんと入れ替わりで、三人の男の子達がやって来ました。
「いらっしゃいませ」
声をかけると、三人とも緊張したのか、真っ赤な顔で固まってしまいました。
「ゆっくり品物見ていってね。今はまだ初級ダンジョンの物がほとんどだけど」
緊張をほぐしてあげる為に声をかけてあげると、ぎこちない動きで店内を見始めました。何をそんなに緊張しているのでしょうか。
「あ、あの……」
「はい、何でしょうか?」
三人の内のリーダーらしき子が、何か聞きたいことがあるようです。
声をかけてきた子の方を見ると、また固まってしまったので、続きを促したのですが中々続きの言葉が出て来ません。どうしたのでしょうか?
「あ、あの……」
「何か質問でしょうか?」
「す、好きな食べ物は何ですか?」
「おまえ、何聞いてんだよ!」
思いがけない質問に、残りの二人が慌ててリーダーを入口まで引っ張っていき、何やら三人で話し合いをしているようです。私の好きな食べ物を聞いてどうするのでしょうか?
しばらくすると、話し合いが済んだようで、また三人が近づいて来ました。
今度はリーダーではなく、一番小柄な子が話をするようです。
「僕たち、昨日この町に来て、今日からダンジョンでレベル上げをしようと思ってたんです。そうしたら、昨日来た時に、門番の騎士の方が、一度この店を見てからダンジョンへ行くように言われたんです」
ええ! どういうことでしょう。
そんな話は初めて聞きます。一体いつの間に……。
「これから装備を調えて、初級ダンジョンへ行く予定なのですが、どうしたら良いでしょうか?」
どうやらこの子達も、門番の方に言われるがまま、意味も分からずやって来たようです。
さて、どうしたものか……。
この町に住むようになり、分かったことがあります。それは、この町の人達が世話好きだということです。
成人は十五歳ですが、初級ダンジョンへは十二歳から挑戦出来ます。
おそらくこの子達は十二歳なのでは?
この子達の生活が少しでも良くなるように、私の店を紹介したのではないでしょうか。魔物を倒して得るお金だけだと、始めは生活が大変ですからね。
そうすると、一通り説明してあげた方がいいかな。
「この店は、この町にあるダンジョンで手に入るアイテムを取り扱う専門店です。売っている品物を見たら分かると思うけど、どんなアイテムでも買い取ります」
三人の子達も、うなずきながら一生懸命聞いてくれています。
「君達は運がいいね。今日から初心者用三点セットを買ってくれた人に、私手作りの地下三階までのアイテムマップをあげます」
三人とも、「おお!」「ラッキー!」「手作り!」などと言って喜んでくれています。リーダーの子だけ「手作り」で喜んでいるのが謎ですが。
「僕達、初心者用三点セット買います!」
おお、早速食いついてくれました。有難いことです。
武器については、リーダーと体格の良い子は『鉄の剣』を買い、小柄な子は『鉄のナイフ』を買ってくれました。
装備を買ってくれたので、マップの説明をしておきます。
「このマップには、どこでアイテムが手に入るかと、どの辺りに魔物がいるかが描いてあります。アイテムは宝箱から手に入るとは限りません」
「知らなかったよ! なるほど、岩の陰や、草の中とかにもあるのか」
「ダンジョンに慣れたら、斡旋所でアイテムバックを借りて行くといいですよ」
三人にとっては、色々と良い勉強になったようです。もう一度店内のアイテムを見て値段を確認した後、今日は初めてなので斡旋所には寄らずに初級ダンジョンへと出掛けて行きました。
上手くいけば、アイテムを売りに再び来てくれることでしょう。
その後、食べ物関係が幾つか売れ、昼食前になった頃シェイラとジンがやって来ました。
「やっほー。来たよー」
「こんにちは。お店の調子はどうですか?」
早速、初心者用三点セットが売れたことを伝えると、二人とも自分のことのように喜んでくれました。二人と友達になれて本当に良かったです。
話が一段落したところで、昨日のアイテムを買い取ったお金を渡します。
「昨日のアイテムの買い取り金額は、三人で割ると、一人5,704Gです」
実は、買い取り金額を三で割ると、5,703G余り2Gとなったので、2Gは二人にサービスです。
「ありがとう! 昼食後からダンジョン行った後にまた来るつもりだけど、今日も夕食後に一緒にダンジョン行く?」
「行くよ。また夕食一緒に食べたいな」
「では、その予定で動きます。また宿で一緒に夕食を食べてからダンジョンへ行きましょう」
そう話が決まると、二人はお金を受け取り、昼食を食べに出掛けて行きました。
読んで頂きありがとうございます。
明日22時更新予定。