10 固定客を獲得
仕入の結果、食物の在庫は『薬草・五十九個』『蜂蜜・四十八個』『リンゴ・二個』『クッキー・五十一個』『クラッカー・五個』となっております。
さて、今日の目玉商品ですが、昨日のような値引きはしません。まとめ買いがお得な感じでいこうと思います。
『薬草・蜂蜜・クッキーのまとめ買いがお得です!
五個まとめ買いで3G、十個まとめ買いで10G値引き!』
こんな感じでいいかな? 後は、様子を見て決めることにします。
お店を開けると、すぐに一人目のお客さんが来られました。
「いらっしゃいませ」
「やあ、サラサちゃん、おはよう。今日も薬草もらえるかな?」
この若い男性は、昨日、薬草を五個まとめ買いして行かれた、料理人のリケットさんです。
どうやら、昨日の薬草料理が好評だったようで、今日は倍の十個欲しいそうです。
「できれば、今後も決まった数を仕入れてもらいたいけど大丈夫かな? よければ、うちの定番メニューにしようと思ってるんだ!」
これはとても嬉しい注文です!
「大丈夫ですよ。事前に必要な数を教えて頂けば、その数を用意しておきますよ」
「それはありがたい。うちの店は、六日営業したら一日休みだから、休み以外の日は、毎日十個は欲しいかな。次の休みは明後日だ」
そうか、私は仕入の都合上、四日営業したら一日店を閉めてダンジョンに行くつもりなので、休みの日のことも確認せねば。
「承知しました。ただ、私の店が休みの場合、前日にまとめてお渡ししてもよろしいですか?」
「ああ、それはかまわない。これからよろしく!」
お互いお礼を言いながら、握手をしました。
リケットさんが帰ってすぐに、猟師の格好をしたおじさんが来られました。
「いらっしゃいませ」
「おう、ここが罠用の餌を売ってる店か?」
いやいや、罠用の餌専門店ではありませんから!
ん? いやまてよ、もしかしてこの人は……。
「ここは、ダンジョンのアイテムを扱う店です。もしかして、猟師のゲンさんでしょうか?」
「おう、そうだ。ステラから、ここで買えと言われたんだが」
よく話を聞いてみると、あの『魔物の肉』という名のピッグを、罠用の餌として使ってみたら、とても良かったので、今日も欲しいようです。
「おう、できれば今日は十個欲しいがあるか? 入れ物は持ってきてる」
そういうことで、なんと『魔物の肉』も、定期的に欲しいそうです。
薬草とは違い、こちらは二・三日に一度欲しいようなので、こちらの定休日をお伝えしておきました。
ゲンさんが店を出られてからは、数人の方が、『薬草一個・蜂蜜一個・クッキー三個』というまとめ買いをして行かれました。
ただ一人、『蜂蜜十個』まとめ買いという、素晴らしい方がおられました。どうやら故郷に帰るらしく、お土産をという事だったようです。
昼休憩の後、お店を再び開くと、シェイラとジンがやって来ました。
「やっほー、サラサ。来たよー」
「こんにちは」
ジンはきちんとした挨拶なのに、シェイラの挨拶は「やっほー」が標準のようです。
どうやら、これから初級ダンジョンへ行くらしく、その前に昨日手に入れたアイテムを売りに来たようです。
「サラサと一緒に行動したおかげで、以前よりアイテムが手に入り易くなりました。ただ、荷物には限界があるので、今回はあまり持って来れませんでしたが。今後は、二人でアイテムバッグをレンタルして、ダンジョンに行くことにします」
ジンはそう言いながら、売りたいアイテムをカウンターに並べていきます。
地下四階と五階を中心に動き、一度地下六階へ下りたようです。そして、嵩張らないアイテムを中心に、持って帰って来たそうです。
「サラサ~聞いてよ! 地下六階でさ~新たに手に入るようになったアイテム、何だと思う?」
とても興味深い話ですが、これはひょっとして……。
「もしかして……壊れた装備品関係だったりして?」
「ええ!? なんで分かっちゃうかなぁ?」
いやぁ、そんな事だと思いましたよ。表情にがっかりと書いているかのようですから。
「一つだけ持って帰って来たよ。これこれ、『壊れたブレスレット』だよ」
いや、それ『バラバラのブレスレット』ですから。と言っても、おそらく私以外、正式名称知らないんだろうけどね。
どうやら、地下六階では新たなアイテムが三種類あったらしいです。服がボロボロで、防具が壊れていたそうです。そう、『破れた服』と『壊れた防具』です。
魔物の種類は、地下五階と一緒だったらしいです。ただ、レッドウルフの数が増え、ゴブリンの数が減っているようです。レッドウルフに乗ったゴブリンとの遭遇率も、少し増えたらしいです。
まあ、ダンジョンの話はこれくらいにして、アイテムの買い取りです。
嬉しいことに、『蜂蜜』と『リンゴ』と『クラッカー』を中心に持って来てくれたようです。装備品も防具類ワンセットといった感じです。
『薬草』は常に予備が必要ですし、『クッキー』はシェイラが食べてしまったとのことで、今回その二種類はなしということです。
「では、買い取り金額の合計が6,405Gになるけど、いいかな?」
「前回もでしたが、こんなに貰えるとは思っていませんでしたので、十分です」
ということで、アイテムの在庫が増えました。
そうそう、買い取りをしている間に閃いたことがあるんだけど、忘れないうちに、二人に相談してみよう。
「まだ時間大丈夫? ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何々?」
なんだかシェイラの顔がニマニマしてるんですが……。
頼られるのが嬉しいのでしょうか?
「さっき思いついたんだけど、『ダンジョン初心者用セット』とかあったら売れるかな? 例えば『鉄の剣・布の服・皮の胸当て・薬草二個』で4,700Gするのをいくらか値引きとか」
「う~ん、そうだね。武器と防具が同じ店で買えるのは楽だね。でも、なんかもう一押し欲しいな~」
そうか、シェイラの言う通りですね。
何かもう一押しないかな~。
「では、サラサの書いた地図はどうですか? アイテムの位置が書いてあるものをサービスするとか」
おお、さすがジン。
いい売り文句を思いつきました!
「じゃあ、『ダンジョン初心者用セット』を買った方には、もれなく初級ダンジョン地下三階までの『アイテムマップ』をプレゼント! とかどう?」
それはいいと、二人とも太鼓判を押してくれたので、明日から売り出すことにします。今日中に何枚か地図を描き写そう。
「そうだ、二人には特別、地下五階までの地図をあげるから。今後、閉店後、一緒にダンジョン行ってくれると有難いんだけど、どうかな?」
「オッケー。私達、ダンジョン行くのは基本的に午後からだから、大丈夫だよ!」
二人とも快諾してくれたので、早速、今日の夕食後にということでお願いしました。
こうなってくると、地下十階までの地図を出来るだけ早く作りたいです。そうなると、レベルも上げないといけません。
休んでいる暇は無いぞ! とは言うものの……体調を崩さない程度に頑張ります。