1 ダンジョンの町に到着 (地図画像あり)
8月15日レイアウトの変更。内容は変わりません。
12月26日地図画像挿入。27日圧縮画像へ差し替え。
「もうすぐつくぞ!」
御者のニコラさんの声が聞こえ、私は馬車から顔を覗かせて外を見た。
馬車の進む先には、大きな城壁がそびえ立っており、入口らしき門の両側には、騎士の方が二人見張りをしていた。
どうやら、城下町へとやってくる人々の身分証を確認しているようです。
もうすぐ昼時という時間の為か、あまり出入りしている人はいません。
これならそれほど待たずに通れそうです。すぐ動けるように荷物をまとめねば。
思った通り、すぐに順番がやってきました。
「馬車の乗客は一人か。中を検めるぞ」
騎士の一人が馬車の中にやってきました。
「ん? 大荷物だな。引っ越しか?」
「そうです! やっと準備が整ったので。あ、ダンジョンで手に入る品々を取り扱う店を開こうと思っているので、開店したらよろしくお願いします!」
お店の宣伝をしつつ、身分証を見せ、騎士の方が荷物を確認するのを待ちます。
「若いのにしっかりしてるな。……よし、通っていいぞ。店はどこに出すんだ?」
お、この騎士さんいい反応だ。ここでさらにアピールを忘れないようにせねば。
「南広場の南です。赤い屋根が目印です。三日後にオープン予定です!」
「そうか、頑張れよ! 時間があれば寄らせてもらうわ」
喜びの拳を振り上げないよう気をつけながら、心の中でやったーとはしゃいだ。
お礼も忘れずに言わねば。
「ありがとうございます!」
さてさて、幸先がいいぞ。
この調子で頑張るぞ!
無事に門を通り、新居となる赤い屋根の店舗兼住居の前に馬車をつけ、ニコラさんと二人で荷物を運び入れました。
「お世話になりました。これ、よかったら食べてください」
ニコラさんにお礼を言いつつ、今朝、昼食用に作っておいたサンドイッチを渡します。
「おお、ありがとよ。サラサちゃん、女手一つで大変だろうが、頑張れよ!」
ニコラさんは、これから一息ついてから次の仕事があるようです。
でも、三日後にはこの町にいるそうで、お店に来てくれるとのことです。
開店当日に、お客が一人も来ないという事態は免れられそうで、ありがたいことです。
さて、これからいろいろ片付けねば。
引っ越しに関する諸々の手続きは済んでいるので、昼食を食べたら、まずは荷物整理です。ご近所さんへの挨拶を済ませ、動きやすい服に着替えます。
私のお店は小さいながらも二階建て。一階が店舗で二階が住居です。
二階は一階の半分程の広さで、台所は一階店舗のカウンターの奥にあり、台所から裏庭に出られるようになっております。
裏庭はちょっと広く、小さな家庭菜園が出来そうです。
しかし、しばらく使われていなかった為、かなり手を入れなければならず、すぐには無理そうです。
まずは二階と台所の片付けをさっさとすませ、一階の店舗部分に取りかかります。
もともとは雑貨屋だった店舗なので、店舗部分はそのまま使います。
広場に面した、お店の入口の片側、入って右側にあるガラス張りの目立つ場所には、目玉商品を置く予定です。
今はとりあえず、開店日を書いた紙を貼っておきます。
入口からカウンターまでの両側には陳列棚があり、カウンターの左には倉庫への扉があります。
とりあえず、まだ商品は並べず倉庫へしまい、店舗をピカピカに磨き上げます。
そろそろ夕食の時間です。
食べに出るので、しっかりと戸締まりをしなければなりません。
ここで秘密兵器の登場です!
実は身内から、出店祝いに素晴らしいものを頂いております!
これは、ある特定の魔法が封じ込められたオーブです。
魔力がないと使えない物ですが、幸いなことに、私は魔法が使えます。
さっそくオーブを起動させ、敷地内の盗難・万引き・暴力行為の禁止魔法をかけます。
これで安心です。
さて、夕食は宣伝しつつ、近所の食堂で済ませましょう。
◇◇◇
おはようございます。
この町での生活二日目の朝となりました。
今日は、午前中にお店の看板が届きます。
お店の名前は『だんじょんショップ☆サラサ』です。分かりやすい店名をと悩みまくりましたが、私にはこれが限界です。
朝食を食べ終えて少しすると、早くも看板が届きました。
看板は、すぐに取り付け終わってしまいました。
午後からの予定を繰り上げて、昼食用のお弁当を持ち、この町にある三つのダンジョンのうち、初級ダンジョンに行くことにします。
この町は、ほぼ五角形になっており、町の中心にお城があります。
町の南西にある門を出ると、初級ダンジョンに行けます。
中級ダンジョンは南東の門、上級ダンジョンは北の門を出れば、それぞれ行けます。
ちなみに、昨日通ったのは西の門です。
実は、私がこの町でお店をするのには理由があります。
自分で言うのもなんですが、実家は結構名の知れた商家です。
そこへ数年前、怪しい格好の人物が、一冊の本を売りに来たのです。
その本は、ダンジョンについての本でした。
買い取ってから倉庫に眠っていたので、私がこっそり調べたところ、この町の三つのダンジョンのアイテムを記録する機能があると分かりました。
これは、とんでもない物です。
私は父親にだけその事を伝え、相談しました。
他人に知られると厄介ですが、ただしまっておくのも勿体ないということになり、魔力もあり多少戦うこともできる私が、本を使ってみることになったのです。
十五才となり成人もしたことですし、独り立ちすることとなりました。
もちろん父親の全面バックアップのおかげです。そして、開店準備が整った訳です。
出かける前に、父親からもらった貴重なウエストポーチから、本を取り出してみます。
このウエストポーチはマジックポーチで、小さいながらも背負い袋五つ分は入ります。
もちろん、このポーチにも盗難防止の魔法がかかっています。
本を開くと、一ページに八つのアイテムのシルエットが描かれており、手に入れたものは色つきの絵になり、アイテムの名前と手に入れた個数まで記録されるようになっています。
それぞれのダンジョンごとにまとめられており、どういう基準か分からない番号がふってあり、その番号順に並んでいます。
そして、気になることがあります。
上級アイテムの後に数ページ、何も描かれていないページがあります。
私が思うに、三つのダンジョンのアイテムを集め終えたら、何かが起こるのではないでしょうか。
アイテム個数も関係するとなると、さらに難易度があがりますな。
今のところ記録済みは、初級アイテムの、
No.2 薬草・二十個、
No.4 蜂蜜・十四個、
No.7 クッキー・五個、
No.12 木の杖・一個、
No.13 布の服・一個、
No.14 皮の胸当て・一個、
以上です。
なぜか、数は全て『個』で表記されています。
これもなぜなのか、ダンジョンの中の魔物には、ダンジョンで手に入れたアイテムを使う方が効果的らしい。
というわけで、まずは着替えです。
肩まである赤いストレートの髪は、邪魔にならないように一つにくくります。そして、布の服を着て、皮の胸当てを着けます。
平均的な体型なので、心配は要りません。とはいっても、体型にあわせてサイズは勝手に調節されるようですが。
木の杖を手に持ち、他に必要な物はポーチにしまっておきます。
では準備も出来ましたので、初級ダンジョンへ行きましょうか。
今日はまだ一人で入ってみるつもりなので、仲間を紹介してくれる斡旋所へは寄らずに行きます。
しっかり戸締まりを確認して、いざ出発です!