宣告
四十代半ばの男がいた。その日、病院に検査結果を聞きに向かう男の足取りは重かった。数時間ほど前、男の許に病院から連絡が入り、何やら重大な結果が出たのですぐに来てくれとの事だった。
病院に到着し、診察室に通された男を神妙な面持ちの医者が迎えて言った。
「さっそくですが、検査の結果が出まして…」
「先生、私は何か重大な病気なのですか!?」
「いえ、あなたは至って健康体です。病気は発見されませんでした」
「じゃあ一体…。勿体ぶらずに教えて下さい!!」
男は医者に言葉の先を促した。
「あなたの身体を『人体健康シミュレーター』で測定、算出した結果、まことに残念ながら、あなたの余命は残り五十年という事がわかりました…」
「そ、そんな…」
医者のまさかの余命宣告に男は絶望に打ちひしがれた。平均寿命八千歳のその世の中では、九十代は短命なのであった。