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パズル

その頃智は容疑者をガラス越しに見ていた。容疑者側からは何も見えていない。その時刑事が容疑者のいる部屋に入ってきて取り調べが始まった。

刑事は容疑者の座る向かい側に座り容疑者を見つめながら話しを始めた。

「聞きたい事が幾つかあるんだか答えてもらえるかな。」

刑事の話し方は先程智と話していた時と同じ笑顔で優しい話し方をしていた。

「は…い………。」容疑者は肩を縮めて怯えながら返事をしている。

智はあんな普通に優しそうな方が本当に藍那を刺したのかと驚いていた。

「では最初に君の名前、そして本当に君が藍那を刺したのかとその動機をもう一度言ってもらおうか。」

刑事にそう言われると何度同じ事を言ったのか、容疑者は淡々と話し始めた。

「名前は国と言います。あの日…お金が無くて…これからどうするべきなのか悩んでいました。すると回りの人達がだんだん妬ましくなってきて…なんで俺だけがこんな思いをって………みんなが帰る場所があるのが羨ましくなって…つい目の前にいる藍那さんを目掛けてナイフを刺しました………本当に誰でも…良かったんです。」

震えながら容疑者国は話し終えた。すると刑事は、

「では、そのナイフは何処で手に入れたのかな?」

国は黙った。そして小さな声で、

「明日から食べるものもないし、食べられる草とかを切って食べようと思いまして近くの百円均一で買いました…。」

確かに藍那さんが刺された現場の近くには小さな百円均一がありそこにそのナイフは売られていた。しかし百円均一の店員はそのナイフを国が買いにきた姿を覚えていないという。

「本当に妬みから誰でも良くて刺したのかな?」

刑事そう言われると国はびくっと驚いていた。

「は…い…」

刑事は国がびくついた姿を見逃してはおらず質問を続けた。

「君は誰でも良かったのではなくて彼女を狙っていたのではないかね?」 国が戸惑い、体を震わせながら黙っている。

刑事は続けて、 「君は彼女を狙っていた。町の人達が藍那さんを目掛けて走る君をみているんだよ。そしてなぜ、藍那さんを刺したのか…」

「私は刺せれば誰でも良かったんです、彼女じゃなければならなかった理由なんてありません。」


国が立上がり焦りながら訴えた。その姿をみて刑事は国が何かを隠しているように思えた。

「あなたは、20歳代の男性に知り合いはいますか。」

国がびくっと体を動かした。

「あなたは誰かに彼女を刺して欲しいと依頼されたのではないですか。」 刑事がそう言い放つと国は体を震わせながら無言で座り続けていた。

「私は……」国が話し始めた。

「私は…人に頼まれて…藍那さんを刺しました…お金をくれると言うのでその…お金に目が眩んで………すいませんでした。」

国は泣きながら訴えた。

刑事もまさか本当に依頼で刺したとは思っていなかったために驚いた。 「では犯人は20代の男性だったのかな」

刑事の質問に国は繰り返した。

「いいえ、20代後半位の女性に頼まれました。名前は知りません。」


刑事も智も驚いた。

「女………どういうことよ。」智は戸惑いを隠せなかった。




その頃藍那は自分が参加出来なかった卒業式の賞状をじっと見つめていた。

藍那が倒れてから目覚めるまでに四日という月日が流れていた。そして藍那はまだ刺されたあの瞬間を思い出す事が出来ずにいた。すると母が病室に入ってきた。

綺麗なお花を飾っている。

藍那は母に確かめたいことがあった。

「お母さん…。」

「なあに?」母は笑顔でこちら見つめてきた。

「私昔心臓悪くて入院してたでしょ、その時知り合った彼の事なんだけど…覚えてる?」

「覚えているわよ、あなたがいつも話してた子の事でしょ、お母さんは会った事無いけど。」

「私その時の事ずっと忘れてたでしょ、どうして私その頃の記憶があまりないの?」

母は私の横に座り話してくれた。

「藍那は心臓がずっと悪くて入院してたでしょ、看護師さんが教えてくれたんだけどね、藍那がずっと仲良くしてた男の子の退院の日に藍那はいきなり倒れたのよ」

藍那はその痛みで現代に戻れた事を思い出した。

「その後からね、藍那の心臓はどんどん悪化して血液をうまく体に循環出来なくなってきていてね一刻も早く心臓移植が必要になってきたのよ。」藍那は確かに心臓移植をしていた。だから今元気でいれるのだ。しかし藍那には疑問があった。

「でも私彼とノートを送り合う約束をしたよ。そのノートは?」

母は驚いていた。 「藍那あなた…記憶が戻ったの…思いだしたの…。」

「少しだけだよ、そのノートはまだある?見たいの。」 母は藍那になんで今までノートを渡さなかったのかを話し始めた。

「藍那はね移植の適合者を待っている間にね、脳に負担がかかってね、記憶があいまいになっていたのよ。だからそのノートに書かれている内容もじょじょに読みづらくなってきていて、藍那は記憶がうすれている事も忘れてるからノートを見せてショックを与えたくなかったのよ、ごめんね。」藍那は母の優しさにさっきまでなんでノートを隠していたのかなど少しの怒りもあったが薄れていった。

「良いよ、ありがとうお母さん。」



次の日母はノートを持って来てくれた。そのノートを見ていると徐々に薄れていく記憶を宏にぶつけていた。『どうかこの記憶が無くなる前にもう一度あなたに会いたい』

この文章をみて藍那は涙が止まらなくなった。

「宏に会いたい…今何処にいるの…宏にはどうしたら会えるの…現代の宏は今何処にいるの…」

ノートの次のページをみた。そこには宏の書いた字があった。

『俺は今アメリカのロスにいます。とても景色が綺麗だよ藍那早く元気になって、一緒に行こうな。』

その後藍那はもう字が書けなくなったようでそこで交換ノートは終わっていた。

「私がこのノートを止めてしまったんだわ…」

藍那は手掛かりの無いノートを抱き締め泣いていた。



その時智が部屋に入って来た。刑事と一緒に…。

「智…。どうしたの…。」

智は泣いてはいるがベッドに座っている藍那を見て涙を流しながは藍那を抱き締めた。

「馬鹿…どんだけ心配したと思ってんのよ……良かっ…た……。元気になって。」

藍那は智を抱き締めた。

「ごめんね心配かけて。ありがとう」 すると藍那はひとりの刑事に気がついた。

刑事は笑顔で藍那を見つめて話し始めた。

「始めまして藍那さん。元気になられてほっとしたよ。少し質問があるんだけど、聞いて貰えるかなあ。」

刑事は藍那に話しかけるとベッドの近くにやって来た。

「はい…。」

藍那は刑事を見つめた。



『ね〜宏。私達はたった四日間しか一緒にいることが出来なかったけど、その四日間は今までで一番幸せな時だったよね…。あなたのいない今はなんだか満たされない思いでいっぱいなの。



ねえ宏。……今、…何処にいるの。』

どうかこれからもみてくださいね。お願いします。

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